私は、議案第25号 令和7年度知多市一般会計予算について、反対の立場から討論いたします。
討論に当たり、まず予算に対する基本的な考えを述べておきます。
市は様々な施策や事業を実施していますが、市が議案として示すひとつひとつの案件については、市民の利益に資するものかどうかを判断基準として賛否を決めています。そのため、市民の利益に適う多くの議案には賛成し、市民の利益にならないと考えるものには反対しています。
一方で、予算は施策や事業の裏付けとなるものであり、市民から託された貴重な税金等のリソースを適切に配分することが求められます。市がどのような考えで予算を編成しているのか、必要な施策に十分な財源が投じられているか、不要不急の施策を推進していないか、コスト削減の努力を怠り、過剰な予算を投じて税金の無駄遣いをしていないかを総合的に判断し、予算への賛否を決定しています。
今回、一般会計予算に反対するからといって、市が行う事業の全てに反対だというわけではありませんし、これは論理的な考え方だと認識しています。市長をはじめ執行部の皆様には、予算に反対する理由と主張に耳を傾けていただき、政策を見直す材料としていただきたく存じます。
令和7年度知多市一般会計予算について、全体としては、令和3年度からの知多市緊急財政改善プランを契機に、経費増が抑制されていること、そして、限られた予算とリソースの中、職員の皆様が真摯に職務に取り組まれていることに敬意を表します。
具体的には、
路線バス通学定期券購入補助金による、学生等への市内路線バス通学定期券の購入補助や、
コミュニティ交通負担金によるコミュニティ交通あいあいバスへのEV車両導入、
コミュニティ施設管理費によるコミュニティセンター指定管理料の増額、
予防接種委託料による、帯状疱疹ワクチンの定期接種化、
合葬式墓地整備工事設計委託料による新たな合葬式墓地の整備に向けた取り組み、など、
住民満足度や地域福祉の向上に資する施策が実施されること、公共施設の維持管理対策が図られること、医療サービスの充実に向けた取り組みが進められること、等の施策を評価いたします。
一方で、本市の財務状況は極めて厳しく、令和7年度の予算概要書によれば、2028年度には財政調整基金をすべて取り崩してもなお、予算編成が困難となる見込み です。地方債現在高も2023年度末に147億円を超えており、継続的な経費の節減や効果的な財源配分の取り組みは欠かせず、将来世代に過度な負担を先送りしない財政運営が求められます。
また、少子高齢化の加速による人口減少が確実視され、安定的な税収を保てるか不透明な状況です。その中で、社会保障関係コストや、社会インフラの維持管理及び更新コストの増にも備えながら、公共サービスの維持改善を目指し、住民満足を追求する予算が求められています。こうした観点から、令和7年度予算が適正であると承認することはできず、反対理由を順に申し上げます。
●「特別職給与費」について、
副市長の2名体制の継続に反対です。本市は知多市副市長の定数を定める条例を改正し、2019年4月1日から施行しました。副市長を増員し、2名体制とすることの問題点は「平成31年3月定例会の議案第2号:知多市副市長の定数を定める条例の一部改正について」の反対討論で述べた通りです。
●次に、「広報事業費」について、
「ビデオ広報制作放映委託料」及び「コミュニティFM広報番組制作放送委託料」に計1690万円の予算を投じることに反対です。私はこれまでも繰り返し広報事業費について疑義を呈してきましたが、本市の宣伝等を随意契約で継続発注すること、及び費用対効果に疑問があり、住民満足度向上に繋がることもなく人口増等の効果も期待できない広報事業は縮小すべきであると考えます。
●次に、「立地適正化計画策定委託料」
「北街区整備公募資料作成支援委託料」など、本来、職員が責任を持って実施すべき業務が外注されております。データ分析や印刷製本などの、一部の業務を委託することの必要性は認めますが、これらの調査や検討は職員が実施すべき項目であると考えます。北街区の整備が事業として成り立つと考えるのであれば、職員が将来展望を持って自ら考えて実施すべきです。
安易に業務を丸投げ委託することのリスクは、
平成30年度:朝倉駅周辺整備事業化検討委託料4734万円
令和元年度:朝倉駅周辺整備事業者公募支援委託料1632万円
令和2年度:朝倉駅周辺整備公募支援委託料748万円
の計7114万円、朝倉駅周辺整備基本構想策定委託料を合わせれば1億円を超える委託を実施して、問題を多く抱える現在の事態になっていることからも明らかです。
●次に「新庁舎整備費」に反対です。
その理由は、議案第14号の新庁舎建設工事請負契約についての討論で述べた通りです。併せて「新庁舎整備費」に付随する「新庁舎整備事業コンストラクション・マネジメント委託料」「新庁舎オフィス環境整備支援委託料」についても、その価格の妥当性や、費用対効果に疑問があり見直しを求めます。
●次に、「朝倉駅前駐車場整備工事設計委託料」について、
この駐車場は、過去の全員協議会で議題となった「朝倉駅周辺整備事業の今後の進め方について」及び「朝倉駅周辺整備事業における新庁舎整備の進め方について」において、「当地における民間の独立採算による立体駐車場の整備および運営は困難」とされているものです。駅前立体駐車場は事業による便益と費用を比較して、事業の実施の可否を評価するB/C(ビーバイシー)などが実施された形跡もなく、データも示されず、議論もされておりません。
本市が保有する公共施設の延床面積を2017(H29)年度から 2046(H58)年度までの 30年間で 20%以上縮減することを目標に設定しているにも関わらず、現市役所庁舎と駅前には存在しない名鉄電車利用者のための立体駐車場を、11億5千万円もの多額の予算をかけて公費で整備するという上位計画と整合性のとれない施策には反対です。
現在の旧保健センター跡地の駐車場は、2023年度の定期駐車1623台、普通駐車15,636台と、月稼働にならすと178台と最大駐車台数201台の範囲で問題なく稼働しております。朝倉駅の1日平均乗降人員は10年前の2014年の7,700人程度から2022年は6000人程度と減っておりますし、駅の東側には民間事業者が運営する駐車場も増えました。にもかかわらず人口15万人超で、本市の倍以上の予算規模かつ不交付団体の刈谷市の事例や、同じく人口が15万人超の大垣市が建設した立体駐車場の事例を超える費用となる朝倉駅利用者のための立体駐車場を11億5000万円投じて、税金負担で新たに設置することは不適切であると考えます。
●次に「資源リサイクル費」にかかる事業について、
本年度より資源回収委託料(プラスチック類)について、プラスチック製容器包装のごみ収集場所での回収が実施されております。
2022年9月議会の一般質問「循環型社会に向けた資源回収の取組について」で申し上げておりますが、プラスチック資源循環促進法では努力義務として「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集及び分別収集物の再商品化に必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と規定されているものの。その実現には、回収委託や、処理委託など多額の経費を要するにもかかわらず、自治体への十分な財政支援は実施されておりません。
本市では61地区で地域回収が実施されており、店頭回収は順調に回収量が伸びておりました。多大な費用と稼働を掛けて、ごみ収集場所でプラスチック類を毎週回収することが、環境面や経済性の観点から妥当であるとのエビデンスもありません。地域回収の推進に向けた支援を手厚くすること等への見直しを求めます。
その他の事業についても、特に空調設備整備に顕著ですが、民間企業と比べ予算査定が甘い事業が散見されます。工業製品として製品情報、型番がある物品については市場価格が明らかであり、市場価格を基準とした物品調達を実施して、役務と分けるべきです。この考え方は、平成30年度決算認定議案の審査・審議時から繰り返し指摘している通りです。
以上、個別項目について、一般会計予算に反対する理由を申し上げましたが、地方自治法で「地方公共団体はその事務を処理するに当たっては住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とされています。
本市の人口は 2015 年から減少しており、市税収入も2020年をピークに見通しは厳しい状況です。主要な税収である個人市民税と固定資産税が継続して増収する見込みはなく、さらに厳しい財政運営となることは明らかです。そのため、不要不急の事業に多額の税金を投じることや、賢い支出の議論を欠いたままに事業を推進することは、市民の行政への信頼を損ない、そして職員の労働意欲を壊しかねないと考えます。
市の財政に対して、職員一人ひとりが自身の財布や家族の財布のような意識で慎重に臨み、最大の効果を上げることを追求すべきです。そうすれば、他市町に比べて高い放課後児童クラブの利用料の値下げや、本市の活発なNPO組織への支援拡大、脆弱で使い勝手の悪い公共交通バスの改善、人材不足に苦慮する事業者への市内雇用マッチング支援、定年退職後に仕事を求める方が増えている中でのシルバー人材センターへの補助拡大など、住民サービス向上に直結する事業や、住民の生活満足度を高められる事業に予算を優先的に配分する等、の費用対効果の高い予算編成が可能であると考えます。
以上、議案第25号 令和7年度知多市一般会計予算について、適正であると承認できず、予算の見直しを提案申し上げまして反対討論といたします。
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