★大阪都構想住民投票は僅差の反対多数にて否決 橋下氏の会見全文★

住民投票

◆大阪都構想の住民投票否決により橋下市長は政界引退へ 既得権益の壁は崩せず◆

 

昨日(2015年5月17日)、大阪都構想の賛否を問う住民投票が大阪市の有権者を対象に実施され、「反対:70万5585票」、「賛成:69万4844票」と「反対」が「賛成 」を1万741票上回り、反対多数で否決されました。本住民投票は「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に基づいて、政令指定都市の廃止を問う住民投票であったため、これで大阪市の存続が決まり、都構想に向けた本法案は廃案となります。個人的にとても応援しておりましたので、開票速報は自身の選挙の時と同じくらいドキドキし、反対対数で否決された結果がわかった時の失望感は言葉に表せないほどの大きなものでした。橋下徹という政治家は、非常に好き嫌いが分かれるかもしれませんが、その才能と能力は圧倒的であり、心から敬意を表したいと思います。TVでは住民投票結果後の会見の中継がカットされてしまい、どんな会見がなされたのかご存知でない方も多いと思いますので、会見内容全文を紹介します。橋下氏の夢と野望、そして大阪を良くしたいという熱意が実現させた「住民投票」.その最後メッセージを見届けましょう。

 


<2015年5月17日 23時10分~@リーガロイヤルホテル大阪 会見全文>

「出典:産経ニュース」



大阪都構想 住民投票 反対多数で否決という結果を受けて…。

橋下氏:「本当に重要な意思表示をしていただきありがたい。大変重く受け止めました。都構想は受け入れられなかったということで、僕が間違っていたということになるんでしょうね。(住民投票を経て)大阪市民が一番、行政に精通していると言えると思う。税金を投入して、これまで多くの職員が僕に付き合ってくれてこうした結論になりましたが、政治家冥利に尽きる活動をさせてもらってありがたく思っています」

松井氏:「それぞれが判断した結果。真摯(しんし)に受け止め、賛成、反対派双方が大阪に問題があるということはわかったわけだから、僕らは残された任期をしっかり働きたい。府庁でも職員が都構想に向けて努力をしてくれた。ストレスがかかることもあったでしょうし、本当に支えてくれたみんなにお礼を言いたい。究極の民主主義で決まりましたが、しっかりこれから働いていきたい」

Q.住民から突き付けられた「NO」の意思表示を2人はどう受け止めるのか、今後の政治活動はどうするのか?
橋下氏:「今回の住民投票の結果を重く受け止めている。(大阪都構想は)間違っていたということになるんでしょうね」

Q.負けてしまった原因は何だと分析しているか?
橋下氏:「僕自身に対する批判もあるだろうし、都構想についても説明不足だったということだと思います」

Q.都構想が反対多数となった場合、政治家を退くと発言していた。その思いに変わりはないか?
橋下氏:「市長の任期はやり遂げるが、政治家はもうやりません。弁護士という肩書はありますから。維新の弁護士としてやらせてもらえませんか、とは言っている。まだ明確な答えはもらえていませんが…。任期満了までの市政については、色んな課題があるが、自民や公明とも話し合って進められるものは進めていきたい」

橋下氏:「自分なりにやれることはやってきました。7年半前の38歳からずっとです。無理してやってきたところもある。でも自分のためにやってきた人間が、公のために何かしたいと思ってここまでやってきた。自分なりに悔いのない、政治家としてこれまでの7年半思う存分やらせていただいた。最後にこういう結果で政治家を辞めると言わせてもらうのは、納税者の皆さんには申し訳ないが、大変ありがたく思う」

Q.注目度の高い部分なので繰り返すが、進退についてもう一度。約70万人が都構想に賛成票を投じた。その数を見ても(政治家を辞めるという)思いに変化はないか?
橋下氏:「それはないですよ。政治家ですから。負けは負けです。戦を仕掛けて、(反対派を)たたきつぶすとまで言ったが、こちらがたたきつぶされた。これが民主主義なんです。メディアも含めて徹底的に議論してきた。これだけの大層な喧嘩を仕掛けて、でも負けても命まではとられない。日本の政治体制はすばらしいと思う。僕はこれから、違う人生も歩めるわけですから。メディアの皆さんにも言いたいが、報道の自由は民主主義にとって本当に大切だ。僕もメディアに対していろいろと言ってきたけれども」

Q.そうは言っても、過去に自身の進退についての発言を覆したこともある。政治家を続けることは100%ないのか?
橋下氏:「(笑いながら)また2万%と言わせたいんですか。あのときはああいう風に言わないと、テレビに出られないという事情があったのでああいう言い方をしましたが、今回はありません」

Q.とはいえ12月までは市長だ。もしそれまでに劇的に状況が変わったら、もしくは10年後、20年後に復活する可能性もあるということを期待していいのか?
橋下氏:「ないです。僕は今回、住民のみなさんの気持ちを酌めていなかった。そういう人が政治家をやってはいけない。僕みたいな政治家はワンポイントリリーフだ。僕は僕自身を実務家と思っている。僕みたいな政治家が長くやる世の中は危険です。敵をつくる政治家は、必要とされる時期にいるだけ。権力なんて使い捨てでいい。敵をつくる政治家が世の中にずっといるのは害だ。それが健全な民主主義というものです。とはいえ、僕が7年半も政治家をやってこられたのは、ある意味、大阪がそれだけ問題を抱えていたということかもしれない。7年半前には僕みたいな政治家が必要だったが、もう必要がなくなったということだ」

Q.大阪都構想の再チャレンジは?
橋下氏:「大都市局を中心にここまで頑張って制度設計をしてきた。ただ、自民、民主、公明、共産の意見を取り入れていない。今後、道州制を取り入れるようなときに、大阪都構想の設計図が参考資料になる。日本全国で統治機構改革を本気でやった地域は大阪しかない。いつの時かは分からないが、日本が危機的な状況になったとき、だれか政治家が登場して統治機構改革を打ち出したときに、この設計図を頼りにしてくれたらうれしい。設計図作りに骨をおってくれた大都市局のメンバーには、今後参考になることがあるかもしれないと、そう伝えたい」

Q.維新の党、大阪維新の会は今後どうなる
橋下氏:「維新の党は分からない。大阪維新の会のメンバーは、大阪都構想を抱えて4月の統一地方選に職を投げ捨てて取り組んでくれた。ふがいない代表でこういう結論になって、申し訳ない。次のリーダーを選んでもらって、引き渡したい。それが会の代表としての最後の務めだ」

松井氏:「維新の党は国政政党として存在感を発揮している。国会議員がしっかりと、国政の課題に国民目線で取り組んでいる。大阪維新の会は、2回の統一地方選で第1党の議席を頂いている。大阪の課題について、一番よく分かっている集団だ。市議会の第1党としての重責を果たしてほしい。全国でもこれだけのローカルパーティーがある地域は例がない。市民と府民のために、政治活動をやっていくことが認めてもらえている。次の執行部の下で、これからも活動を頑張ってほしい。任期満了まで、府議会と市議会の中で与えられた仕事をする。他会派と話し合いをしながら、大阪で政党としての存在感を高めてほしい」

Q.大阪維新の会の職も退かれる?
松井氏:「任期満了までは活動をさせてもらう」
橋下氏:「大阪維新の会のメンバーに認められて、僕みたいなやつがリーダーであり続けられた。感謝している。大阪府・市の職員にも、よく支えてくれたと感謝している」

Q.どの部分が有権者の賛成・反対に影響したか、分析してほしい
橋下氏:「トータルで伝わらなかった。こちらの説明不足です」

Q.大阪維新の会の役職について、松井幹事長は
松井氏:「任期満了まで知事を務める。与えられた仕事をやりきろうと思っている。この場で辞めるというのは、住民投票で反対されて感情的に言ったと思われるのは嫌なので、とにかく今は任期満了まで務める」

Q.今後、任期満了まで半年の議会対応は
橋下氏:「大阪維新の会の市議団が、市議会の中で話をしてくれる。他会派の理解を得られるよう、協議していく」
松井氏:「今後はノーサイド。府議会でも市議会でも第1党なので、他会派のみなさんと、どういう形で改革案件を一歩でも進められるか、話し合いを進める。府市統合本部で3年半かけて、成長のためには統合した方がいい案件、民営化した方がいい案件などをまとめている。1つでも進めることが、府民・市民のメリットになる。リーダーシップを持って、他会派と話し合いをして進めてほしい。すでに議会には(改革案件を)まとめたものは提案しているので、調整して可決されるようにしたい」

Q.11月に知事選、市長選がある。維新の会としての対応は
橋下氏:「それは何も考えていないので」

Q.投票率が66・83%。今回、初めて投票所に行ったという人もいる。これほど大阪の街のことを考える機会もなかったと思うが?
橋下氏:「ものすごい民主主義にとっては良いことですよ。通常の地方選挙なんかは(投票率は)30%台。そういうことがある中で、66%の人が投票所に足を運んでくれた。中身がすごくね、ものすごい難しいことですよ。大学生が1年間勉強しても分からないこと。メディアの情報も交えつつ、タウンミーティングも1回2時間ぐらいある中で(市民は)足を運んでくれた。反対集会に行った人もいるだろうし。大阪市の民主主義のレベルが上がったと思いますよ」

Q.1万票差で都構想がダメになった。これは悔しくて仕方ないことだと思うが。何でそんなに晴れやかな表情なのか?
橋下氏:「こんなの最高の終わり方じゃないですか。ボロカスに負けたのなら、シュンとするが、こんなに支持してもらってありがたい。維新の会のメンバーも大都市局も総力戦でやってくれて。これはもうトップとしてこんなにありがたい話はない。納得できる」

Q.今回はギリギリまで結果が読めなかった。どういう風にして待っていたのか
橋下氏:「そんなのメディアが数字を言い合うだけで、僕らは待つだけですから。こんな経験はそうそうさせてもらえないし。すごい経験をさせてもらった。ありがたいです。納税者の皆さんに感謝しないといけない」

Q.結果が出た直後の率直な気持ちは?
橋下氏:「いや、負けたなぁと。終わったと」

Q.先ほどから橋下さん、民主主義の素晴らしさとかを認めているが、ただ単に政治家として疲れたんじゃないですか?
橋下氏:「(笑)。政治家やってたら疲れますよ。仕事やってたら皆さんも疲れるでしょ。(僕も)疲れていますよ。これで(政治家として)終わりは終わり」

Q.しかし、これほどの僅差なので、賛成派の支持者は納得しないのでは。こんな意見が党内外からも飛び出したら、どうする
橋下氏:「現職市長で反対なわけですから、普通は市長はまぁ、まんべんなく好かれる(人がなるのが)通常の原理原則ですよ」

Q.住民投票が始まる前、市長は憲法改正の国民投票の予行練習だと言っていた。今回学んだものは?
橋下氏:「僕じゃなくてメディアでしょ。(住民投票が)告示になってから報道し始めて。どの段階から情報提供をしないといけないのか。テレビ局も全然ディベートの技術を学んでいないじゃないですか。そういうものを学んでいない放送局もある。きちんと伝わる会にしないと、正確な情報提供につながらない。質問会なのかディベートなのか分けないと、反対派の時間と(賛成派の意見が)同時間なんてありえないですよ。テレビ局は総務省のことを気にしているかわからないが、同時間の配分なんて…。国民投票のときもよく勉強してもらって情報提供をしてほしい」

Q.住民投票運動のあり方や課題は?
橋下氏:「市役所での会見のときに言いましたが、原則は自由がいいと思う。日本では公職選挙法でかなり強制的に(選挙)運動を制限していますが、これでは有権者に伝わらないです。メディアに比べれば、われわれの情報なんて微々たるもの。基本的には(運動は)自由にしなきゃならないと思う」

Q.告示後は「大阪が変わるラストチャンスだ」と訴え続けてきた。今回の結果では変われないか?
橋下氏:「いや、変わるチャンスは得たと思いますよ。賛成、反対票がこれほど出たんですから。お互い考えながら進んでいくと思う。僕は議会と対立関係ありましたが、これをきっかけにことが進んでいけばいい。僕らは負けた方ですから勝った方にきちんとお願いして協議したいと思う」
松井氏:「都構想自体は反対多数となったが、改革案件はまだあるのだから、賛成票の皆さんについては、改革が進まない部分への不満もある。議会で(都構想)反対の立場のみなさんと維新が話し合いをして改革をしてほしい」
橋下氏:「大都市制度については、自民党の皆さんが対案として出されたわけだからこれはしっかり進んでいくと思いますよ。(自民党市議団の)柳本顕幹事長には、いつとの回答はいただいていませんが、これはぜひ進めていかないとならない」

Q.政界引退するのは無責任ではないか。ほかにも原発再稼働問題や若者世代の年金問題など課題がある
橋下氏:「市長は一種の特別職で公務員ですから全体の奉仕者です。でも国民の奴隷ではありません。これからは自分の人生をしっかり歩んでいきたい。弁護士としてプロフェッショナルというプライドもある。万人に好かれることもない。依頼された仕事を、求められたら結果を出す人生を歩み出したい」

Q.原発再稼働問題のときに「野田政権を倒す」とまで言っていたが
橋下氏:「国民の奴隷ではありません。職業選択の自由もあります。そういうことであれば、クライアントとして報酬を払ってくれるならやります」

Q.今後、野党とはどう付き合っていく
橋下氏:「維新の会の執行部に確認してください。僕は執行部ではありませんから」

Q.住民投票について、自民党大阪府連は反対していたが、安倍晋三首相や菅義偉官房長官は間接的にだが、応援しているというスタンスを示してきた。どう感じていたか?
橋下氏:「自民党支持層に影響はあったと思いますよ。詳しいことは分かりませんけれども、あれだけ人気のある政権ですからね」
松井氏:「これまで一貫して、首相、官房長官ともに大阪都構想については異議があるが、住民投票に任せると話していた。その部分についてはぶれがなかったので、とてもありがたかった」

Q.今回の住民投票で地域の中で賛成と反対が分かれ、地域の住民の間でしこりが残るのではという懸念の声もある
橋下氏:「しこりのないようにしてもらいたいと思います。民主主義ですから。終わればノーサイド。否決という結論が出た以上、何かしこりの残ることではないと思う。大阪市を存続させていくという方向でみんながまとまっていけばいいと思います」

Q.橋下氏は会見の冒頭で、自身のことを「嫌われる政治家」と言った。今回の住民投票についても、ほかのやり方はなかったのか?
橋下氏:「なかったですね。松井氏とともにいろんなパターン考えてきた。みなさんここまで、住民投票までできると思っていましたか。もうこれしかないという、ギリギリのところで進めてきた」

Q.嫌われる政治家は結果を出せないということにもなる。矛盾していないか?
橋下氏:「僕はこれまで歴代の市長や議会ができなかったこと、手をつけてこなかったことをやってきたという自負がある。やはり僕は政治家というより実務家だ。政治家はいろんなことを受け止める包容力が必要だと思うが、僕は課題があればそれをクリアしていく人間。まわりにどう思われようがやる。これからもそういう政治家が求められる場面があると思う」

Q.反対派も死力を尽くしたと思うが、その動きをどうみるか?
松井氏:「どちらも必死だった。こちらは二重行政を解消しようとしたし、あちらは市役所を守りながらでも改革できると主張した。議論がかみ合わないところはあったが、お互いに死力を尽くした。制度と政策の話が一緒になった。本来、大阪都構想は制度の話なのに、税金や水道代が上がるなど市民の負担が増えるとの相手側の主張を打ち消すのに苦労した」

Q.情勢調査では、女性に対する集票力が弱いと出たが?
松井氏:「目の前の生活不安に対し、特に女性は敏感に反応したのだろう。制度の話とは別だったのだが、なかなか誤解を解けなかった」

Q.運動期間は短くなかったか?
松井氏「十分だった。ただ、大阪の問題を解消するという制度の話をするのに、反対派は不安点を挙げて、それが議論になった。大阪都構想への漠然たる不安。これを解消できなかった。メディアには、対案との比較をしてほしかったという思いはある」

Q.大阪都構想への不安が競り勝ったということか
橋下氏:「今さら何を言っても言い訳になる。僕たちの説明不足。これに尽きる」

Q.以前、橋下氏は最終的には市民の判断は保守的になると言ったが
橋下氏:「現状に不平不満がないと変化に一歩は踏み出せない。今が安定していれば、変化には踏み出せないでしょう。逆に言うと、この7年半、市民・府民に不平不満がないように役所改革をしてきたので、それで不平不満がなくなった。民主党から政権交代して、安倍政権が安定している。そして、自分で評価するわけではないが、府政や市政では、それまでの不平不満をそこそこ押さえることができつつあった。全体的な政治の状況の中で、変革を求める提案は受け入れられなかったのかな。ただ、安定しているのはいいこと。変革を求めるのは不平不満がある証拠ですから。自分の提案が実現できないのは悔しいが。世の中の安定の、バロメーターだったのではないか」

Q.もっと早く住民投票に持ち込めば、結果は違ったと思うか
橋下氏:「逆に拙速だとして不安を感じたと思う。むしろ時期は早かったのかもしれない。ただ、前回のダブル選挙で大阪都構想を実現すると公約に掲げた以上、住民が、拙速かどうかを含めて判断すればいいと思っている」

Q.正確な数字はないが、浮動票の投票率が高かったとように思うが?
橋下氏:「数字を把握していないので、感覚的に言われても答えようがない」

Q.これは数字を持っています。66%を超える投票率があった。有権者の関心を高める工夫は何があるか?
橋下氏:「それはメディアが考えてくださいよ。関係ないでしょう、そんな話は」
Q.でも、関心を高めるのに何が役立ったと思うか
橋下氏:「(笑みを浮かべて)どう思います?」

Q.投票日ぎりぎりまで演説したり、政治家だけでなくボランティアがチラシを配ったり、一般の人が政治参加したのも一因だと思う
橋下氏:「じゃあその通りです」

Q.政治家を引退すると何度も言っている。あえて聞かせてほしい。安倍晋三首相のようにリベンジした例もある。ご自身を重ねてしまわないか?
橋下氏:「首相は僕よりもはるかにすごい政治家ですよ。首相と同じなんてありえない。リベンジとか言うが、最高の政治家人生を歩ませてもらった、何も悔いはない。こんな最高のことはないですよ。いろんなメンバーの中でやらせてもらって。自分の力を持てるだけ出した。これ以上はもう無理なんでね。最後がこの結果なんでね。誰か本書いてくださいよ」

Q.おそらく政治家になるつもりがなくて、政治家になったと思うが
橋下氏:「(質問を遮る形で)いや、政治家になるつもりはあったよ。知事になったんだから」

Q.いや、それまでで
橋下氏:「あぁそれまででね(苦笑)」

Q.政治家になってご家族も苦労されたと思う。家族への思いなどがあれば
橋下氏:「文春ですよね(笑)。家族への負担は大きかった。全力で大阪府警が守ってくれた。それでも38歳から警護対象になって普通の生活が制限されることもあった。よく子供が耐えてくれた。それは相当ですよ。子供の世界ではあつれきとかあったんでしょうけど、うちの子供の学校がうまくやってくれて。父親が橋下徹だといろいろあるけど、子供の世界を築いてくれる友達がいてね。7年半、相当な負担をかけているから、任期満了後は(家族との時間を)取り戻していきますよ」

Q.政治家引退後はテレビからのオファーもあると思うが?
橋下氏:「全くないと思いますよ。テレビなんて僕のこと大嫌いでしょ(笑)」

Q.住民投票の物事の決め方について。0か100かの決め方。プラスとマイナスについて教えてほしい
橋下氏:「物事には話し合いと、それでは決められないことがある。僕は7年半の予算も全部通している。ただ、今回の大阪都構想は身分にかかわること。やるかやらないか。議員の身分もなくなるし、そこが危ぶまれるから(反対派が結集した)。話し合いでは無理な場合は住民投票の民意で決めないと。税金はかかるが、殺し合いになるよりマシですよ。もちろんこれは多額の税金を使って、納税者に感謝をしないといけない。殺し合いにならない、武力を使わない。ある意味、必要経費ですよ。武力行使に比べれば、なんて素晴らしい日本なのかと感激している」

Q.今回は議会選挙などと比べて住民投票という手法。どこで民主主義のレベルが上がったと思ったのか
橋下氏:「違います。住民投票だから良いというわけではないですよ。ここまで知事とタウンミーティングを繰り返して住民に説明した。一方的な説明かも分からないけれど。ある意味、このプロセス全体が相当民主主義のレベルを上げたと思いますよ。それこそ大正時代の自由民権運動みたいな雰囲気でしたよ」

橋下氏:「毎日新聞にもさんざん文句を言ったが、僕が都構想をどれ位のスパンで考えているかといえば、100年ですよ。今回は、当初の案と違って『周辺自治体が入っていないじゃないか』といわれるが、一気にできるわけないですよ。知事、市長のダブル選を獲ることも普通じゃありえない。だから100年のスパンで考えて、徐々に広げていけばいいと思っていた。まず器を作ることが大事だと都構想を打ち上げた。全て一気に、というのは無理なので、大阪市からスタートして大阪都庁ができれば受け皿になって国から権限や首都機能を得てと。このときにはまたもめると思うが。大阪都庁ができて初めて国と渡り合える。知事もやったから分かるが、国からいきなりは財源はもらえない」

橋下氏:「権限と財源というが、政治闘争ですから。地方分権は、何でもかんでも市町村に渡せばいいとは思ってません。例えば、安全保障は市町村には無理です。可能なことを市町村に振り分けるんです。今回、都構想は…」

橋下氏:「(国から権限などを得るのは)今の状況では無理。府市もそこまでの力はありません。権限の配分は政治闘争になる。お願いベースでは絶対無理。そのために大阪都庁、都知事の力がないと。これまで、ある程度のことやってきたという自負はありますよ」

Q.大阪のみならず、全国で維新といえば橋下さんというふうにみんな思っている。橋下さんが政界引退されるだけでなく、江田代表も辞任するということで、維新全体が求心力失って弱体化するのでは、という懸念はないか
橋下氏:「別に人材がいる。大丈夫だ。維新は僕の個人商店じゃないんだから。特に大阪維新の会は優秀なメンバーがたくさんいる。かえって僕らがいなくなったほうが、彼らが活躍する機会が増えるのでいいのでは」

Q.国政の維新の党としてはどうか
橋下氏:「国政も同様だ。いいメンバーたくさんいるので」

Q.政治家を引退されるということもあり、これから橋下さんにテレビ局からオファーが増えると思われるが
橋下氏「知らないですよ(笑)。これまで相当テレビ局ともめているので、『橋下許さん』というテレビ関係者も多いのでは。でもこの7年半はノーギャラで出てたので、今度は文化人枠以外で出してもらえれば(笑)」

Q.「政治家人生に悔いなし」という橋下氏の言葉をとりあえず信じるとします。これまでに国政進出の話も出たことがあると思うが、ぶっちゃけて(国政進出に)色気が出たことはあるか?
橋下氏:「いつの時代のことですか」

Q.7年半前に政治家になられてからです
橋下氏:「ないですないです。都構想の実現に向けてずっと走り続けてきましたから」

Q.石原慎太郎氏から「将来の総理になれ」とも言われていたが、一度も(国政進出を考えたことは)なかったのか?
橋下氏:「僕や石原さんは、議院内閣制の中で一番議員に向かないタイプ。人間関係の中で物事を決めていくのだから大変。僕は首長だからできているのだと思う。僕はそんなん、からっきしできない。5分も持たない」

Q.たられば、になるが、橋下氏は住民投票で賛成多数になればもう一度市長選に出ると言っていた。世間はその後、国政に出ると思っていたと思うが?
橋下氏:「やはり、(都構想では)堺市をどうにかしたいと思っていた。大阪100年のスパンで考えて。僕の政治家人生がどれくらいあるか分からないが、次のリーダーが出てくるまではと思っていた。今の東京と大阪のどこに違いがあるかと言えば、東京は市域拡大に成功したが、大阪は失敗したという点だと思う」

Q.政治家を引退されたら、以前のように茶髪にメガネ姿に戻るのか?
橋下氏:「もう似合わない。相当疲れた男になっています。これからは精気取り戻しますよ(笑)」

Q.体調のお話をされましたが、大丈夫ですか?
橋下氏:「体調は絶好調ですよ。運動不足でお腹は出ていますけどね。でも顔はやつれている。松井幹事長もですけれども、政治家は本当に顔に出てくるんです。これはだめですよ。もっと精気みなぎらないと」
松井氏:「最近目がしょぼしょぼするんですよね」
橋下氏:「それおじいちゃんじゃないですか」

橋下氏:「自分の人生振り返って、ここまでやりきったことはない。高校時代のラグビー、あれはサボっていたこともあったけれども、弁護士目指していた大学時代のことを考えても。都構想は色んな人に支えられて、ここまでやり切らさせてもらった。公のために少しはやれたかなと。来年からは自分のために頑張ります」

Q.今後、プライベートで何がしたいか
橋下氏:「プライベートの時間なんて増えませんよ。もうちょっと市長のスケジュールを見てください。まったく空きはありませんよ」

Q.橋下氏にとって、やしきたかじんさんの存在は切っても切れない。伝えたいことはあるか?
橋下氏:「死んだ人に対しての言葉を、この場で言うべきではないでしょう。やれるところまでやったというか、力を残して中途半端にやるのは嫌だけど、全力でやった自負はあるので、たかじんさんも分かってくれるのではないですか」

Q.島田紳助さんにも世話になったと思うが、どう報告するか?
橋下氏「またメールします。(ここで、大阪スポーツ記者が、紳助さんは悲しんでいると思いますか、と投げかける)僕が言うことではないですよ。メールをしておきます」

Q.弁護士として活動再開するが、どんな弁護士になりたいか?
橋下氏:「子供に質問しているんじゃないんだから」

Q.社会正義の実現、とか理想はあるか?
橋下氏:「それはここで言う話じゃないでしょ」

Q.任期満了後の退任が、「うめきた」再開発や、カジノ誘致など、大阪市の成長戦略にどう影響するか?
橋下氏:「すでに国家戦略特区の方向性は示している。大阪府と市が協力して、一部の市職員は松井知事の下で仕事をしている。これはかつては考えられなかったことですよ。順調に進んでいます。今後は、どんな知事と市長が誕生するか。有権者の判断になると思います」

Q.(選挙戦の中)市民の言葉で、橋下氏の心に残ったものはあるか?
橋下氏「なかなかコミュニケーションをとれないので。それを伝えるのはメディアの役割でしょう。何かあるのであれば、今言ってもらえれば。やっぱり大阪市は基礎自治体として、規模は大きすぎますよ。市民の声を聞くと言っても、表面的にしかできない。もちろん、市民と触れ合う中で心に残った言葉はあるが、いちいち紹介する必要はないでしょう」

Q.市民からは「嫌われないでほしかった」との言葉もあった
橋下氏:「嫌われなかったら改革できないですよ。嫌われることを恐れてたら、改革なんて絶対できません。こんな政治家が不必要になったらチェンジする。これが民主主義でしょう」

Q.自身の政治姿勢で変わったことは?
橋下氏「それはみなさんがどう変わったと見るかでしょう。一番変わったといえば、(毎日放送の情報番組)『ちちんぷいぷい』との関係が一番変わった。最初は僕の仕事を紹介してくれたりしていたのに、最後はケンカばっかりするようになりましたからね(笑)」

Q.橋下徹として市民にメッセージがあれば
橋下氏「感謝している、それだけです。真剣に投票してくれた方への感謝」

Q.あと半年で任期が終わる。改革途中や着手したばかりのものもある。これからというとき。あと半年、教育や西成区の問題にどう対応するか?
橋下氏:「やれるところまでやりますよ。選挙で負ければ、4年で終わるのは普通のことです。何度もやってたら権力は腐敗するし。任期ごとに変わることを前提に行政は継続しているんですよ。基本的には4年。僕らの仕事は4年」

Q.橋下氏だからこそ西成の問題もここまで進めてこれた。西成が変わるチャンスが失われたかもしれない。これは仕方ないのか?
橋下氏「それは仕方ないこと。(西成を変えようという)政治家がまた出てきますよ。僕には(政治家を続け、西成を変える)そんな特殊能力もない。権力の座に就き続けるのは健全じゃない。僕はやれるところまで精いっぱいやったつもり。次の市長が出てくれば、(行政として)継続する事業もあれば、方針転換するものもある。そういうものだと思いますよ」