★“大阪ダブル選挙”選挙結果の考察とまとめ“大阪都構想”の今後★

大阪ダブル選挙

 

◆大阪市長選挙&大阪府知事選挙はおおさか維新の吉村氏、松井氏が勝利。橋本氏の後継者として大阪から既得権益を打破できるか?◆


2015年11月22日に大阪市長選挙と大阪知事選挙が実施され、大阪市長には新たに吉村洋文氏が当選し、大阪知事には松井一郎氏が再選を果たしました。日本では残念ながら、ニュース専門放送局が存在しないため、全国版のリアルタイムの開票中継もなければ、当確の報道も速報だけで、選挙結果確定後の後のニュース番組でも大した報道しかされない残念な現実です。本当にこの国の放送局は政治経済の報道意欲に欠けています。今後の国政にも影響を与えるだろうこの重要な選挙の結果については、情報と情勢を把握しておくことは教養として不可欠であると考えますが、適切かつ端的に情報がまとまっている報道が少ないです。簡単整理して分析するとともに、選挙後の会見について記します。

 

 

まず立候補したすべての候補者に敬意を表したいです。知事選の栗原候補にせよ、市長選の柳本候補にせよ、戦の相手は大阪で圧倒的な選挙の強さを誇るおおさか維新の候補であり、橋下徹氏というカリスマに挑むという姿勢に畏敬の念を覚えます。選挙は落ちれば地獄。肩書きも職もなく、明日からの生活も不透明となります。栗原氏は元大阪府議であり、柳本氏は元大阪市議。その職を投げ打って挑戦した彼らの勇気と意欲は、何者にも批判されるべきではないでしょう。さて、それでは、選挙結果を振り返ってみます。


 

●大阪市長選挙「吉村洋文氏」 大阪知事選挙「松井一郎氏」の得票数●

 

~大阪府知事選挙(2015年11月22日投票)~
・有権者数:7,050,381人
・投票者数:3,161,323人
・投票率:45.47%
「松井一郎(大阪維新の会):2,025,387票」
「栗原貴子(無所属):1,051,174票」
※現職の松井氏が自民党推薦の栗原氏にダブルスコアの得票差をつけて当選。

 

~大阪市長選挙(2015年11月22日投票)~
・有権者数:2,154,413人
・投票者数:1,056,466人
・投票率:50.51%
「吉村洋文(大阪維新の会):596,045票」
「柳本顕(無所属):406,595票」
※維新新人で橋下氏が後継者として推す吉村洋文氏が自民党推薦の柳本氏に約20万票の得票差をつけて当選。

 

橋下徹,吉村洋文

 

●大阪市長選挙 吉村氏勝利の要因(個人的見解)●


大手新聞社やテレビ報道が立派な分析や考察を実施していますが、今回の大阪市長選挙の結果は、大仰な講釈を垂れるまでもない当然の結果であったと思います。吉村氏の勝因は本当に単純な理由ではないでしょうか?
 
・そもそも大阪の地盤沈下&不景気を放置した既存政権に対する批判として橋下知事(橋下市長)が誕生した。
・大阪都構想は僅差で反対派が勝利したが、橋下氏と維新の実績(改革手腕)は一住民の結構な割合が評価している。
・実際に大阪選挙区における2014年衆議院議員の議席は維新が第一党(全国では他はすべて自由民主党が第一党)
・自民党は柳本氏を推薦するも、共産党の相乗りのような印象を与える。主義主張がまったく異なる自民共産共闘という異常事態。
・自民支持層も共産支持層も、敵の敵は味方なのか? として応援意欲が失せる。そもそも政策論争もない。
・無党派層の多少なりとも教養がある層は、政治の体たらくに幻滅しており、少しでも改善する可能性のある維新に投票する(積極的か消極的かの差はあれど)

 

 

●吉村洋文 新大阪市長は覚悟の大きさが違う●

 

なによりも、吉村氏は衆議院議員の任期が最大3年残っているにも関わらず、を辞職して大阪市長選挙に挑んだのです。衆議院議員という職を投げ打って、勝てるか勝てないかもわからない選挙に身を投じるなんて、なかなか出来ることではありません。バックに橋下徹氏が付いているとは言え、大阪都構想は反対多数で否決されていますし、相手の柳本氏はその反都構想のリーダーでした。負ければ何も残らないし、大阪市長は少しでもミスをしたり、円滑な運営を実施出来なければ、批判の矢面に立つ激務の職です。なによりも橋下徹氏の後継者という目で見られ、プレッシャーは半端ない。

 

にも関わらず、彼は衆議院議員を辞して挑戦して勝利し当選を勝ち取った。心底尊敬します。というわけで、維新の吉村氏が当選したのは順当な結果あったと思います。ただし、橋下氏という船頭の今後の方針が不明瞭であるため、橋下氏の動向によっては瓦解の可能性もありえるのが危惧されるところです。以上が考察で、そして、テレビ局の放送は最低で、新聞社でもまともな報道をした記事をなかなか見つけられませんでしたが、産経新聞は充実したコンテンツを公開していたので、紹介しておきたいと思います。

 

 

●「大阪市長選挙 & 大阪府知事選挙」当選確定後の維新会見●


以下、→産経新聞大阪本社版 より転載。

※動画は →<W選・11月22日>松井一郎+吉村洋文 当確会見 フルバージョン

 

【大阪ダブル選】維新会見(1)“影の主役"は出席せず…「橋下・松井改革を踏襲。さらに前進を」松井、吉村氏
 
 「維新」対「非維新」という大阪を二分する構図で22日、投開票が行われた大阪府知事、大阪市長のダブル選。「選挙に強い」といわれる底力を見せつけた「大阪維新の会」が完勝した。市長選で初当選確実となった元衆院議員の吉村洋文氏(40)と、知事選で再選確実の大阪維新の会幹事長、松井一郎氏(51)が同日夜、大阪市北区のホテルで記者会見に臨んだ。
 
 《政治家引退を表明している代表の橋下徹市長は、事前に「会見には同席しない」としている。一方で、会見場脇の控え室に待機しているとみられ、その動向が注目される》
 
 《ホテルの宴会場に設けられた会見場には、200人超の報道陣が詰めかけた。午後8時、投票終了時刻とともに松井、吉村両氏の「当選確実」を伝える報道各社の速報が早々と流れた。同10分すぎには、維新関係者から「当選者の会見は8時半に始まります」とアナウンス。「誰が出ますか」と報道陣からの質問に「当選者の2人です」。橋下氏の名前はなかった》
 
 《松井、吉村氏が会見場に姿を現したのは、午後8時半すぎ。2人はそれぞれ一礼して着席。“勝利宣言”で何を語るのか。まずは、松井氏がマイクを手に立ち上がり、連休の中日に投票に行った有権者に礼を述べてこう続けた》
 
 松井氏「吉村新市長と私に一票を託した皆さんの思いに応えられるように、橋下、松井で行ってきた大阪の成長戦略、改革を今後も継続し、豊かな大阪をしっかり作っていきたい。皆さんが納得できる大阪府市の行政を続けていきたい」
 
 《続いて、立ち上がった吉村氏。深々と晴れやかな表情で一礼後、橋下、松井両氏の改革を踏襲して前進すると宣言。さらにこう語った》
 
 吉村氏「橋下改革の修正点、私が独自に進める部分をしっかりしたい。選挙活動中に『大阪をよくしてね』という声が多かった。明るい大阪、発展する大阪を実現したい。府市一体となって進んでいる改革を、松井知事と進めていきたい」
 
 《次々とたかれるカメラのフラッシュの中で、記者らの具体的な質問が始まった》
 
【大阪ダブル選】維新会見(2)橋下氏は「これからがスタート」と…吉村・松井両氏 “府市合わせ(不幸せ)”解消を
 
 《府知事選に再選確実の「大阪維新の会」幹事長の松井一郎氏と、大阪維新代表の橋下徹市長の後任として出馬し初当選確実となった元衆院議員の吉村洋文氏。冒頭の2人からのあいさつが終わり、報道陣との質疑に移った》
 
 --お二人それぞれに聞きたい。(当選確実は)改革姿勢への一定の評価があったということだと思うが、今後の大阪都構想についての受け止めは
 松井氏「5月17日に提案させていただいた提案書が受け入れられなかった、と受け止めている。ただ、(都構想自体に)NOではなかったということだと思う。(自民が提案していた)大阪会議(大阪戦略調整会議)は今、全く機能していない。話し合いは続ける。20年とか30年、解決せずに課題を置いておくのは良くない。議論を続けさせてもらいたい。住民とひざ詰め談判で議論し、都構想について訴え、市民の皆さんに納得してもらえる設計図づくりしていく」
 
 吉村氏「69万が賛成、70万が反対だった。反対の中には、拙速なのでは、大阪会議で解決できるのでは、という意見も多かったのではと思う。いわゆる『府市合わせ』の状態は解決すべきだが、大阪会議は全く機能しておらず、まさに選挙戦で争点になった。討論会などでも必ず議題にあがったが、相手はそこは議論もしないという形だった。そこを修正する。(都構想の)議論を続けさせてくださいと訴えてきた。100点満点ではないかもしれないが、修正して、議論を続けていってくださいという民意があると思う」
 
 --「都構想」という言葉は今後も使っていく?
 松井氏「使いますよ。分かりやすい固有名詞になっているから。大阪市内で特別区を設置し広域は一元化する、という意味だから」
 
 --とはいえ反対する陣営、議会の構成は変わっていない。難しいのでは
 松井氏「議員の皆さんも選挙で選ばれた方々。(ダブル選という)選挙で直近の民意が表れた。それを重く受け止めてほしい」
 吉村氏「議会も、話し合いに応じて頂けると思っている。より良いものを一緒に考えていけると思っている」
 
 --今回の知事選、市長選の2勝。橋下氏の引退宣言撤回の大義名分ができたのでは
 松井氏「いったんは身を引くということですから。5月17日(の住民投票)の結果を受けて。それ以降、橋下代表ご自身も言われているが、民間人としての、個人としての人生というのは、代表が決められることだと思う」
 吉村氏「都構想を否決されたという事実に変わりない。だから、よりよい修正案を問うていきたい。橋下市長ご自身の進退は、ご自身で決められること」
 
 --早々に当確が出た。勝因は何か
 松井氏「大阪維新の会のチームが一致団結して戦った。4年間やってきたこと、主張、政策が有権者に伝わったからだと思う」
 吉村氏「橋下市長の改革の実績。選挙戦でも『改革を続けていってね』と声を掛けられた」
 
 --選挙戦で、橋下氏は大阪市内に特に力を入れた。吉村氏のためだと思うが、影響は大きかったか
 松井氏「情報発信力の面で大きかった。橋下代表が誠実に自身のやってきたこと、今後の課題を広く市民に伝えることができた」
 吉村氏「これまでの主張が有権者に伝わっていないという印象があり、今回、市内を中心にしっかりお伝えしていくという(方針だった)。広く伝わったのでは」

 --吉村氏に。橋下氏の後任で、プレッシャーがあったと思うが
 吉村氏「僕も40歳の生身の人間。表には出さないが、正直プレッシャーはあった。(橋下氏は)大きな改革をしてきた人なので。無名というハンデがあるなかで、橋下市長、大阪維新の改革というのは僕にも染みついている。プレッシャーをはねのければ道が開けるのではと思ってやっていた」
 
 --知名度の面でまだまだだと思うが
 吉村氏「橋下市長の知名度は群を抜いている。ただ、大阪維新の会としての実績、それ(改革)を続けてくれ、という思いが有権者にあったと思う。維新のメンバー全体でやってきた改革をさらに続けていく」
 
 --橋下氏からねぎらいの言葉は
 松井氏「『まずはよかった』ということだけ。ここがスタートだと」
 吉村氏「よりよい大阪をつくっていくための、今からがスタートだと。会って直接言われた」
 
 《落ち着いた様子で答える松井氏に対し、質問者の目を見据えて張りのある声で応対する吉村氏。その姿は初々しさを感じさせる》

【大阪ダブル選】維新会見(3)“敵を定めて叩く”橋下流、評価はするが「議会と粘り強く合意形成していく」吉村氏
 
 《淡々と報道陣の質問に答える松井一郎氏と吉村洋文氏。質問は、橋下徹市長の後を受け継ぐ吉村氏の政治姿勢についても及んだ》
 
 --橋下氏の政治手法について修正すべき点は修正するといっていたが具体的には
 吉村氏「地下鉄の民営化など、議会との関係で進んでいないことは多かった。議会と合意形成をして初めて進む案件はたくさんあり、それらは止まっていた。私自身が議会出身なので修正すべきところは修正して確実に進めていくという点がひとつ。
 もうひとつは橋下市長が就任したころは、役所内部の改革にかなりパワーを使っていた。大阪を元気にしていくという点をもっと内外に発信していかないといけない。景気もよくないといけない。他都市や経済界との連携も必要で、大阪の良さをトップセールスしていきたい」
 
 --橋下氏の政治手法で、敵を定めてたたくという点は是非が分かれた。今後どうしていくのか
 吉村氏「選挙中にも申し上げたが、(橋下氏には)やはりずば抜けた実行力がある。だがそれではどうしても進まないところある。僕は議会出身者だから、粘り強く合意形成をすすめることが大切だと思っている」
 
 --近畿の他の自治体との関係をよくしていくことについては
 松井氏「例えば観光などで連携しようとしても、京都の府と市で(考えが)固まっていないところがある。京都の中でも意見が違うところある。だから道州制なんです。だが、もし道州制を地方から発議してやるとなると、大阪都構想の100倍ぐらい力がいる。これは本当に至難中の至難になる。努力はしている。だが、そこは他の自治体の事情によるところがある。大阪が形になっていないと交渉力がない。だから大阪を一体にしようと申し上げている。
 それと先ほどの橋下さんの政治手法についてですが、彼は敵と見なして攻撃するようなことはしません。決めごとの中で違う形になってきた場合は徹底してやり合っていく。それは政治のひとつのやり方です」
 吉村氏「(自治体連携を)積極的にやっていきたい。大阪にはすごい魅力がある。最大限発揮するには府と市でねじれあってはだめ。橋下さん以上のことをやっていって内外にいいところを発信したい」

【大阪ダブル選】維新会見(4)姿見せぬ橋下氏について「逆に居る方が不自然」吉村氏 「再度、都構想の住民投票を」松井氏
 
 《知事選で再選確実となった「大阪維新の会」幹事長の松井一郎氏と、市長選で初当選確実の元衆院議員、吉村洋文氏。会場では、2人の会見の様子を伝えるテレビ各局の中継も始まった。質問は、会場に姿がない代表の橋下徹市長に及んだ》
 
 --これまで存在感を示してきた橋下氏の姿がない。違和感をもつ府民や市民もいるのでは
 松井氏「当選会見ですから、民意を得た当人が会見すべきものだと思う」
 吉村氏「その通りだと思う」
 
 --会見について橋下氏とは事前に話をした
 松井氏「そういう話はしません。当選会見だから、民意を得た2人でごく自然な姿だと思う」
 吉村氏「逆にいらっしゃる方が不自然ではないかなと。暗黙の了解でした」
 
 --維新の中でも異議はなかった
 松井氏「そうです」
 
 --今後の近畿などの周辺首長選への関わりは
 松井氏「『大阪維新の会』には、それぞれのエリアで地方議員、仲間がいますので、その皆さんの意見を聞いて決定します。メリットやデメリットなど、まさに地方分権ですから仲間の意見を聞いて、選挙にかかわるか判断します」
 
 --国政政党「おおさか維新の会」を立ち上げたが、ダブル選の結果が新党に与える影響は
 松井氏「悪いことはないでしょうね。プラスだと思う。ただ、どのくらいかはわかりません」
 
 --2人は今後、(維新が)過半数を持たない議会にどう対応する
 松井氏「(ダブル選で)自主投票を決めた公明党さんとは、この民意を受けて協議をしていきたい」
 吉村氏「同じく、公明党さんは選挙戦を通じて敵対関係になっていない。民意を示されて判断する政党だと思うので、話し合いを続けたい」
 
 《吉村氏の回答は、激しい選挙戦を繰り広げた自民にも及ぶ》
 
 吉村氏「自民もわれわれと価値観が正反対ではないので、合意形成はできると思う。選挙は終わったので、民意を受け近いところがあれば、話し合いに応じてもらい、こちらも修正して対応したい」
 
 --大阪都構想の最大のハードルは70万人の反対票だが
 吉村氏「反対された方の中にも改革は必要だが、維新の強引な進め方に疑問を持って悩んだ方もいるはず。不安を払拭できるように、話し合いで修正して案を決めたい」
 
 --都構想は、4年間の任期中に再度住民投票まで持っていくのか
 松井氏「政治家に与えられているのは4年間。この間にできる限りしていく。まさに期間限定ですから、4年がわれわれに与えられた時間だ。住民の意見を聞いて、今度は賛同されるものをつくっていきたい」

【大阪ダブル選】維新会見(5)「橋下氏は内部改革に時間とられた。自分はトップセールスに力を」吉村氏
 
 《疲れを見せる様子もなく質問に答えていく松井一郎氏と吉村洋文氏。話題は再三、大阪都構想の今後についてに集中する》
 
 --都構想を進めるためには、再び事務局設置などの手続きが必要になる。12月議会で条例案などを出すのか
 松井氏「4年前もそういう流れになったが、4年前は議会で維新が過半数を取っていた。今は府市ともに過半数は持っていない。協議しながら進める」
 
 --今後はどのような動きになってくる?
 松井氏「知事と市長が決定したわけだから、他会派の人たちと協議したい。府市とも維新は第一党。できるだけ早期に、都構想の議論を続けられる態勢をつくりたい」
 
 --住民投票と同じ有権者が投票して、違う結果が出たことへの分析は
 松井氏「二重行政は解消してほしい、強い広域自治体をつくってほしいという点は否定されていない。手段として、前回の(維新が出した)設計図なのか、自民などが言っていた大阪会議なのかで悩まれた方がたくさんいた。今回は都構想という1つのテーマについてマル、バツをしたのでなく、知事、市長と選ぶ中で、どちらを信頼して任せるのか。人を選ぶ選挙ですから。違う結果になるのは当然」
 吉村氏「『府市合わせ』という課題を解決して、という市民は多い。反対といってもすべてに反対でなく、法定協議会の進め方であったり、もう少しいいものができるんじゃないか、ということだったのではと思う。今回の選挙は、(都構想を)進めるのか、終わりにするかという主張だった。最終的な解決として、都構想の議論を続けてほしいという人が多かったことが反映されている」
 
 --橋下路線の継承は分かるが、「吉村カラー」を市民は期待しているのでは
 吉村氏「大阪の経済をよくしなければいけない。食文化、観光など、いいところがいっぱいある。役所内部の改革というのは継承路線だが、もっとトップセールスに力を入れる。橋下さんは、役所内部の改革に時間をとられた。だいぶ改善されてきたが。抽象的な表現だが、明るい、元気のある大阪をつくりたい。そのために大阪の顔として、トップセールスはしっかりやる」
 
 --就任までの1カ月。何から準備するか
 吉村氏「市長として判断しなければいけないところをしっかり判断できるように色々やっていく。そんなに時間がないので」
 
 --松井氏の2期目の方針は?
 松井氏「現職ですから。議会に出している案件をまとめていくだけ。成長戦略は10年プランをつくっているが、吉村新市長としっかりタッグを組んで進めたい」
 
 《ここで吉村氏がマイクを握る》
 
 吉村氏「マニフェストに書いているように、おいしい給食にしようとか、子供たちの医療費助成とか。こういうものを着実に実行していく」
 
 --前回のマニフェストについては選挙戦で「9割達成」とPRしていた。では、次は何をするのか
 松井氏「さきほどから議論になっている、二重行政を完全になくしていくこと。積み残している課題。二度と『府市合わせ』と呼ばれないように」
 吉村氏「新たにマニフェストに掲げていることは、着実に実行していきたい」

【大阪ダブル選】維新会見(6)都構想再挑戦「何がダメだったのか、膝詰めで住民の意見聞きたい」松井氏
 
 《大阪府と大阪市の連携という橋下徹市長の政治路線の継承を強調する松井一郎氏と吉村洋文氏。質問の後に松井氏と吉村氏が言葉を交わす場面もみられた》
 
 --大阪市の海外戦略について、慰安婦問題などで橋下市長は海外でも批判されたが、どう考えているか
 吉村氏「橋下市政を継承するのでそういう考えで続けていきたいが、国政の課題についてどこまで関与するのかということもある。私は大阪市政をしっかり進めていきたい。外交問題については大阪市政に集中したい」
 
 --大阪都構想に再挑戦することになるが、前回の問題点をどう修正していくのか
 松井氏「その問題点を膝詰めで聞きたいと言っているわけです。前回も自信のないものを出したわけではない。国とも協議をして作り上げた設計図で、自信のあるものを出した。だが否決されたので、何がだめだったのか。第一歩として住民の声を聞いて作り直させてほしいといっている。謙虚に住民の声を聞いていくのは当然のこと」
 吉村氏「基本的には(松井氏の意見と)一緒だが、都構想に反対された70万人の意見を聞いていくとは、住民投票をしたからこそできること。より多くの住民に理解してもらいたいと思っている」
 
 --橋下氏がいったん政治家を引退するが、今後相談する局面はでてくるのか
 松井氏「法律顧問として大阪維新の会に関わってくるので相談はしますよ」
 吉村氏「よりよいものをつくっていくのが目的なので、そのためぜひ協力を仰いでいきたい」
 
 --選挙中、橋下市長を乗り越えると言っていたが、吉村カラーを打ち出すということか
 吉村氏「表現の仕方と思うが、今までよりいい制度を作っていくのが政治家の役割。橋下市長は役所の改革に労力を割いていた。それらを引き継ぎながら、大阪のよいところを内外に発信していく。給食サービスの改善など、今よりいい制度を進めていきたい」
 
 --松井氏は、強引な手法を改めたいと言っていたが、言葉通りに受けとめていいか
 松井氏「そのまま受け取っていただいて結構だ。強引と批判されてきたが、議会の皆さんに答えを求めるときにいくらていねいに協議してもまとまらないときには、強引な手段が必要なこともあったということだ。最初から強引に行こうといっていたわけではない」
 
 --今回の選挙で、自民党大阪府連をどう見ているか
 松井氏「それは自民と共産は組んだらだめだ。野合、談合でしかないと思っている」

【大阪ダブル選】維新会見(7)橋下氏と意見食い違ったら?「意思決定に法律顧問の橋下氏の関与はない」松井氏
 
 《知事選で再選確実となった「大阪維新の会」幹事長の松井一郎氏と、市長選で初当選確実の元衆院議員、吉村洋文氏。会見では、新たな大阪府市のリーダーとしての意気込みが伝わる》
 
 --政治家引退を表明している代表の橋下徹市長が「法律顧問」に就任する。今後、橋下氏と2人の意見が食い違ったら
 松井氏「法律政策顧問ですから、意思決定に橋下氏が関与することはありません。あくまで、法律政策で相談させていただくということ」
 
 --ダブル選では大阪都構想の再挑戦に民意を得たという認識か。都構想が実現すれば、大阪市の廃止は避けられない。今回のダブル選の結果を受けて市廃止の民意を得たと認識しているのか
 松井氏「都構想の議論について、『続けていいよ』という民意は得たと思う」
 吉村氏「大阪市を廃止するといわれるが、市の中身の議論はされていない。住民のサービスや地域コミュニティーをひっくるめて、全てがなくなるとされているが、行政組織の大阪市役所はなくなるが、提供する行政サービスはなくならない。地域コミュニティーもなくならない。大阪市がなくなるのではない」
 
 《これから橋下市政を継承する吉村氏は、持論を展開し、さらにこう続けた》
 
 吉村氏「(選挙結果は)議論を続けてもいいということだと思う。(都構想を)修正する議論を続けていく。大阪市がなくなるというのは、ミスリードにつながる。より良い修正案を市民に図りたい。スクラップのことだけをおっしゃるが、ビルドのところも言わないと(市民が)勘違いされる。対立が目的ではない。より良い大阪を作りたいだけ」
 
《2人の会見は間もなく1時間になろうとしているが、まだ終わりそうもない》

【大阪ダブル選】維新会見(8)大阪経済への処方箋は…松井氏「観光客を1千万人に」 吉村氏「大阪のポテンシャルをアピール」 
 
 《会見開始から1時間を経過したが、知事選で再選確実となった松井一郎氏と、市長選で初当選確実の吉村洋文氏への質問は止む気配がない。話題は、大阪経済の活性化策に移った》
 
 --吉村氏に聞きたい。街頭演説の終盤で、「橋下市長を乗り越える」とおっしゃっていた。具体的に、どういったところから手を付けていくのか
 吉村氏「市政というのは常に動いている。大阪都構想の修正も、子供たちにおいしい給食を提供するというのもやらなければいけない課題だが、議会の議論やタイミングもある。できるところからやっていく」
 
 --議会との合意形成は具体的にどんな手法で
 吉村氏「いろんなやり方がある。あらゆる手法を尽くして、修正すべきは修正して。正解というものはないので」
 
 --大阪経済を良くするための優先順位はあるか
 吉村氏「特に優先順位は考えていないが、大阪の持っているポテンシャルを外に発信すること。観光や技術など色々な強みがあるが、それを内外に出していかないと、企業が大阪に来てもらえない。橋下・松井体制になってから、転入企業と転出企業の差はだいぶ縮まっているが、まだ転出企業の方が多い。大阪ベイエリアの開発についても、しっかりやっていかないと取り残されてしまう」
 
 --松井氏は、橋下氏と進めていた成長戦略を、今後どう展開していくか
 松井氏「これから吉村新市長と進めていくが、大阪の観光客は、2020(平成32)年に650万人が目標といっていたが、これが2015(27)年に達成できる。だから、2020年に観光客を1千万人に上方修正することをここで宣言したい。あとは、製造業のバックアップ、これをしっかりやりたい。中小企業、ものづくり製造業の開発力をしっかりサポートできる態勢を行政として整備し、大阪のものづくり企業を応援したい」

【大阪ダブル選】維新会見(9)自民・共産の“政策協議なき一致”「政治家同士の野合で決めていく時代ではない」吉村氏
 
 《府市連携を強調する松井一郎氏と吉村洋文氏。新しい体制での大阪のかじ取りについて、質疑が繰り返される》
 
 --自民党は今回の結果を受けて大阪都構想について民意を尊重するという意見もあったが
 松井氏「それは自民党としての意見でしょうか。自民党として意見をまとめてほしい。府議団、市議団の意見であればそれは歓迎したい」
 
 --今回の選挙では自民党推薦候補を民主党と共産党が応援した。選挙に与えた影響についてどう分析するか
 松井氏「自民党と共産党が選挙において政策協議なしで一致しているというのは、有権者にとって一番わかりにくいし、おかしいという感覚になると思う」
 吉村氏「有権者は大阪をよくしてほしいという思いが強いと思う。政治家同士の野合というか政治家のルールで決めていこうという時代ではない。そういう声が多かったのではないか」
 
 --大阪会議についてどう考えているか
 松井氏「条例で設置されているのでそのままの状態でしょうね。だが今の状況から見ると建設的な議論ができる状態ではない」
 
 --来年夏に参院選がある
 松井氏「戦略的な話だから、今ここで手の内を明かすようなことはしない。橋下代表と執行部としていろんな戦略を練って、勝てる戦いをしたい」
 
 --大阪の副首都化については
 松井氏「『首都』自体が法律で明確に位置づけられているわけではない。まずは法律で位置づけていくことが必要。日本の危機管理の点からも首都という位置づけが必要だと訴えていきたい」
 吉村氏「大阪の成長を考えたとき、大阪の副首都化は大切だと思う。国政課題でもあるが、二極をつくるというのは大阪維新の会にとって大切なので積極的に打ち出すことになる」
 
 --お二人が会見に出てきたとき橋下氏はいたのか
 松井氏「いました。まだホテルを出ていない。『またこんなへんなことを聞いているな』とチェックしているのではないか。今回選挙を支えてくれたメンバー、ボランティアの支援があってこそ、この戦いができた。そう(橋下)代表がおっしゃってました」
 
 --これまで維新が強く支持されてきた理由に、決められる政治という点があったと思う。話し合いをしながら維新らしさをどう維持していくのか
 松井氏「期限を切って話し合いをしますよ。協議を継続するだけではなく、期限の中で答えを出していく。物事は決めていくが、譲れるところがあるかどうかを話し合うということ」
 吉村氏「府市一体でできることはこれまで通りのスピード感でやっていく。地下鉄の民営化も継続審議で長引いている。止まっているところについては私自身は結果、実績を出すということでやっていきたい」

【大阪ダブル選】維新会見(10)繰り返しの質問に苛立つ場面も 「ブレずに大阪の成長進める」吉村氏
 
 《「期限を切って物事を決めていく」。知事選で再選確実となった「大阪維新の会」幹事長の松井一郎氏と、市長選で初当選確実の元衆院議員、吉村洋文氏。今後も他党と話し合いを続ける一方、スピード感を持って大阪府市行政を進めると決意を新たにした》
 
 --吉村氏は大阪に注力したいと発言したが、国政政党「おおさか維新の会」の政調会長も務めている。今後、市長職とともに国政の課題も責任者として担うが、どう進めるのか
 吉村氏「今後の新代表の下で、政調会長の指名があるかはわからない。政調会長としての前提で話せば、大阪市と国政でも福祉や地方分権など密接に関連する課題がある。当然、積極的に関与したい。安全保障問題などは、国会議員団などが結成されると思うので、役割分担できれば問題ない」
 
 --早々に「当確」が出た。これまで維新に組織はないとしてきたが、支持層が固まり、新しい時代に入ったということでは
 松井氏「維新の支持者はわれわれの改革の部分を評価している方々。他の政党にあるような各種団体などに所属しているから、応援するというのとは全く違うと思う。日々、僕らをチェックしながら本気で改革しているか判断する方々だ。維新の支持が固まっているというのは、大阪でスタートして(これまでの)5年半のわれわれの活動を理解いただいているんだろうなと思う」
 吉村氏「維新は、企業団体献金を禁止している。政策理念に共感して一票を投じられているので組織ではない。ブレずに大阪の成長を進めることが大事だと思う」
 
 《カリスマ的存在の代表、橋下徹市長不在で行われた会見。繰り返しの質問も増え、松井、吉村両氏がいらだつ場面も》

【大阪ダブル選】維新会見(11終)「1勝1敗では意味がなかった」松井氏と吉村氏、会見後にガッチリ握手、府市連携改めてアピール
 
 《会見には一般紙やテレビ局のほか、週刊誌やスポーツ紙の記者も多数出席。大阪都構想の今後や大阪の産業振興などに集中していた松井一郎氏と吉村洋文氏への質問は、政界引退後は維新の法律政策顧問に就任するとされている橋下徹市長に支払う報酬額や、弁護士としての橋下氏の評価にも及んだ》
 
 --細かい確認になるが、橋下氏の法律政策顧問就任への法的手続きというのはいつごろ契約するのか
 松井氏「まだまだ。(市長の任期の)12月18日まではしっかりと働いてもらいますから。法律政策顧問として、(党の)意思決定には参加をしません」
 
 --(橋下氏の)ギャラはどれぐらい
 松井氏「ギャラは、どうでしょう。(質問したスポーツ新聞の記者に)御社でも法律政策顧問にはお金を払っているでしょう? 金額については交渉だが、そこは相談して決める」
 
 --吉村氏は同業者として、橋下氏は弁護士として優秀だと思うか
 吉村氏「一緒に仕事したことないので…。これだけ突破力があるので優秀でしょう。最終的にはクライアントが決めることではないですかね」
 
《ここまで終始、きまじめな調子で質問に答えていた吉村氏。砕けた内容の質問に、この会見が始まって初めて相好を崩した》
 
 --吉村氏が勝てると思った瞬間は
 吉村氏「最後の最後まで、ないです。本当に分からないな、と思っていた。相手(の柳本顕氏)も頭脳明晰(めいせき)な方ですし。難しい戦いだと思っていた」
 
 --これだけ早く当確が出たのは、大きな差があったということ。要因、勝因は
 吉村氏「やはり大きいのは、4年間の橋下市政の実績と、府市一体でやってきたという事実。その評価が大阪市内で高かったということ。私自身は無名なので、維新自体を評価してくれたということでもある」
 
 --松井氏は、(選挙期間中に)吉村氏のサポートに入る形で大阪市に入ることも多かったと思うが
 松井氏「2人で勝たせてもらわないと、橋下・松井でやってきた成長戦略、改革案は進まない。僕1人というのはあり得ないと、覚悟を決めてやっていた。セットで勝って初めて、ねじれがなくなり、改革を続行できる。1勝1敗では意味がなかった」
 
 《ここで会見が終了し、立ち上がって2人並んでの写真撮影に応じた松井氏と吉村氏。カメラマンに促されてがっちりと握手を交わし、改めて大阪維新による「府市一体の改革」をアピールした。一斉にフラッシュがたかれると、固い表情が多かった2人からようやく、白い歯がこぼれた。会見時間は1時間40分だった》