令和5年(2023年)3月議会 令和5年度知多市一般会計予算 反対討論
知多市議会議員 川脇裕之
私は、議案第10号 令和5年度知多市一般会計予算について、反対の立場から討論いたします。
討論に当たり、まず予算に対する基本的な考えを述べておきます。市は様々な施策や事業を実施していますが、市が議案として示すひとつひとつの案件については、その都度市民の利益に資するものかどうかを判断基準として賛否を決めています。そのため、市民利益に適う多くの議案には賛成して、市民の利益にならないと考えるものには反対しています。
一方、予算は、施策や事業の裏付けとなるものであり、市民から託された貴重な税金等のリソースをどこに適切に配分するのかを決めるものです。市がどのような考えで予算を編成しているのか、必要な施策に十分な財源が投じられているのか、不要不急の施策を推進していないか、コスト節減努力を怠り、過剰な予算を投じて税金の無駄遣いをしていないか、等を総合的に判断して、予算への賛否を判断しています。
今回、一般会計予算に反対するからといって、市が行う事業の全てに反対だというわけではありませんし、これは論理的な考え方だと認識しています。市長をはじめ執行部の皆様には、予算に反対する理由と主張に耳を傾けていただき、政策を見直すキッカケとしていただきたく存じます。
令和5年度知多市一般会計予算について、全体としては、令和3年度からの知多市緊急財政改善プランにより、経費増が抑制されていること、そして、限られた予算とリソースの中、職員の皆様が真摯に職務に取り組まれていることに敬意を表します。
具体的には、つつじが丘保育園や岡田西保育園などの保育施設の改修や
"3款2項6目4(P107)"、
知多斎場の火葬炉の改修など"4款2項1目4(P127)"、
住民サービスに直結する公共施設の維持管理対策が図られること、
子どもの居場所支援事業や"3款2項1目8(P97)"、
スクールソーシャルワーカーの増員"10款1項3目2(P171)"、
小中学校プール清掃委託など"10款2項1目2(P173)"、
疲弊する教育現場への支援が図られていること、
やまもも第2のパン生地発酵器購入や"3款1項2目4(P87)"、
帯状疱疹ワクチン接種費用の補助"4款1項2目(P119)"、
梅が丘幼稚園の認定こども園化工事設計など"10款5項1目(P183)"、
市民生活の充実に向けた新たな施策が実施されること等を評価いたします。
一方で、本市の財務状況は、総務省公表の「令和3年度地方公共団体の主要財政指標一覧」(※1)によると、本市の経常収支比率は88.5と、前年度から若干の改善はあるものの、名古屋市を除く愛知県内37市中、8番目に高く、知多半島5市の中で最も厳しい数値です。これは他市と比較しても固定支出の負担が大きく、自由に政策に使える資金の余裕が無い状態にあることを示しています。
令和5年度予算では、財政調整基金を約11.2億円繰り入れ、臨時財政対策債を約2億円発行して一般会計の歳入にあてなければ、一般財源が不足するという厳しい財政状況にあり、継続的な経費の節減や効果的な財源配分の取り組みが欠かせません。
借入金(かりいれきん)である一般会計の地方債現在高も令和3年度末に168億円を超えており(※2)、将来世代に過度な負担を先送りしない財政運営を進めていく必要があります。
少子高齢化の加速による人口減がほぼ確実なものとして予測され、安定的な税収を保てるか不透明な状況です。そうした中で、社会保障関係コストや、社会インフラの維持管理及び更新コストの増にも備えながら、公共サービスの維持改善を目指し、住民満足を追求する予算が求められています。
こうした観点から、予算が適正であると承認することはできず、反対理由を順に申し上げます。
2款1項1目の「1特別職給与費」について、
副市長の2名体制の継続に反対です。本市は知多市副市長の定数を定める条例を改正し、2019年4月1日から施行しました。副市長を増員し、2名体制とすることの問題点は「平成31年3月定例会の議案第2号:知多市副市長の定数を定める条例の一部改正について」の反対討論で述べた通りですが、改めて簡潔に申し上げます。
政令市の名古屋市を除けば、副市長の2名体制をとっている県内自治体は、2023年1月時点で、比較的規模の大きい10自治体です。(※3)
20歳代の若手職員は年収300万円台と低額な賃金体系であることに加え、知多市緊急財政改善プランでは、職員の給与を減額しています。このような状況で、役割とアウトプットが不明確かつ、年間給与額が約1,450万円もの支出となる副市長の2名体制を維持することが、市民だけではなく、現場の職員に納得のいく取り組みとは思えません。
知多市には680人を超える職員がおり、一般行政職に限っても300人を超える職員がいます。有能な職員が多数いるのですから、適材適所の権限移譲を実施して業務を進めるべきであり、また組織改編により組織のスリム化が図られる中で、副市長の2名体制の継続に反対です。
次に、2款3項3目の「2広報事業費」について、
「ビデオ広報制作放映委託料」及び「コミュニティFM広報番組制作放送委託料」に計1690万円の予算を投じることに反対です。私はこれまでも繰り返し広報事業費について疑義を呈してきましたが、本市の宣伝等を随意契約で継続発注すること、及び費用対効果に疑問があり、住民満足度向上に繋がることもなく人口増等の効果も期待できない広報事業は縮小すべきであると考えます。
次に、2款3項1目「2企画調整事務費」の「広域交流拠点調査委託料」
8款4項2目「3朝倉駅周辺整備事業費」の「北街区まちづくり形成推進調査検討委託料」
など、本来、職員が責任を持って実施すべき業務が外注されております。データ分析や印刷製本などの、一部の業務を委託することの必要性は認めますが、これらの調査や検討は職員が実施すべき項目であると考えます。
安易に業務を丸投げ委託することのリスクは、
平成30年度:朝倉駅周辺整備事業化検討委託料4734万円
令和元年度:朝倉駅周辺整備事業者公募支援委託料1632万円
令和2年度:朝倉駅周辺整備公募支援委託料748万円
の計7114万円、朝倉駅周辺整備基本構想策定委託料を合わせれば1億円を超える委託を実施して、経済合理性と現実性に問題のある調査や検討の報告書が出てきたことからも明らかです。
それを鵜吞みにして進めた結果、元々の朝倉駅周辺整備事業はとん挫し、多大なる時間と投資と機会を損失する結果に至りました。これは関連資料等を公開情報から削除しても変わらない事実であり、いわゆるサンクコスト(埋没費用)・バイアスに囚われた、合理的でない誤った判断の典型例です。
広域交流拠点や北街区まちづくり形成を計画するのであれば、職員が将来展望を持って自ら考えて実施すべきです。
"2款3項1目「2企画調整事務費」(P67)"
"8款4項2目「3朝倉駅周辺整備事業費」(P153)"
次に、債務負担行為の、
新庁舎設計委託料について、設計委託が必要であることは認識しており、支出は令和6年度からと計画されております。新庁舎整備と立体駐車場整備という約89.5億円の投資を実施する計画が、根拠資料の提示や説明もないままに進められております。2022年12月議会の一般質問「朝倉駅周辺整備事業及び新庁舎整備について」及びこれまでの一般会計の質問や討論で申し上げておりますが、新庁舎整備基本計画で結論づけた延床面積9,300平方メートルから規模が増加すること、朝倉駅前に3層4段300台程度の規模の市営立体駐車場を整備すること、新庁舎の移転先が現市役所庁舎の職員用駐車場ではなく朝倉駅前であることの、具体的な根拠を示さず、説明も欠けたまま新庁舎整備事業コンストラクション・マネジメント委託や新庁舎等設計委託が予算計上されております。市役所新庁舎の移転先と規模について、市民に明確な根拠を示し、丁寧な説明を行わなければ、本市の将来にわたって禍根を残しかねません。令和9年度の新庁舎供用開始予定というスケジュールありきの計画に固執せず、慎重な検討と事業推進を求めます。
次に、同じく、債務負担行為の
資源回収委託料(プラスチック類)について、プラスチック製容器包装のごみ収集場所での回収が令和6年度から計画されております。本件について、プラスチックゴミ回収車がごみ収集場所で毎週回収することが妥当であるのか、定量的に合理性を検証いただきたいと考えております。
2022年9月議会の一般質問「循環型社会に向けた資源回収の取組について」で申し上げておりますが、プラスチック資源循環促進法では努力義務として「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集及び分別収集物の再商品化に必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と規定されているものの、2023年12月時点では自治体への財政支援が明確に示されておりません。回収体制の強化やごみ選別施設の整備などの処理費用はいずれも自治体負担となる懸念があります。
本市では61地区で地域回収が実施されており、店頭回収は順調に回収量が伸びております。新たに多大な費用と稼働を掛けてごみ収集場所でプラスチック類の回収をするのではなく、地域回収の推進に向けた支援を手厚くすることを検討いただきたく存じます。
その他の事業についても、特に空調設備整備に顕著ですが、民間企業と比べ予算査定が甘い事業が散見されます。工業製品として製品情報、型番がある物品については市場価格が明らかであり、市場価格を基準とした物品調達を実施して、役務と分けるべきです。この考え方は、平成30年度決算認定議案の審査・審議時から繰り返し指摘している通りです。
地方自治法で「地方公共団体はその事務を処理するに当たっては住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」とされています。
新型コロナウィルス感染症等の影響により日本社会経済が大きなダメージを受け、本市でも緊急財政改善プランを策定して職員の人件費まで削減せざるを得なかった状況の中、不要不急の事業に多額の税金を投じることや、賢い支出の議論を欠いたままに事業を推進することは、市民の行政への信頼や、そして職員の労働意欲を損ないかねないと考えます。
市の財政に対して、職員一人ひとりが自身の財布や家族の財布のような意識で慎重に臨み、最大の効果を上げることを追求すべきです。そうすれば、他市町に比べて高い放課後児童クラブの利用料の値下げや、 本市の活発なNPO組織への支援拡大、脆弱で使い勝手の悪い公共交通バスの改善、人材不足に苦慮する事業者への市内雇用マッチング支援、定年退職後に仕事を求める方が増えている中でのシルバー人材センターへの補助拡大など、住民サービス向上に直結する事業や、住民の生活満足度を高められる事業に予算を優先的に配分する等、の費用対効果の高い予算編成が可能であると考えます。
以上、議案第10号 令和5年度知多市一般会計予算について、適正であると承認できず、予算の見直しを提案申し上げまして反対討論といたします。
(※1)
●令和3年度地方公共団体の主要財政指標一覧
https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/R03_chiho.html
(※2)
●知多市の財政 借金と貯金
https://www.city.chita.lg.jp/docs/2014010600059/
(※3)
●市町村長等名簿
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shichoson/0000046285.html
コメントをお書きください
中井裕 (月曜日, 08 5月 2023 18:11)
当選おめでとう御座います。貴方の活動を支持しているものです。
孤軍奮闘されている状況を危惧しています。複数の同志同を議会におくりこむべきだと思いますが、そのために私に何ができるのか、ご意見があれば伺いたいとおもいます。
★川脇ひろゆき(管理者)★ (金曜日, 12 5月 2023 15:55)
>(#1)中井様
応援ありがとうございます。
私(議員)の職務は、公正・公平で効率的な行政が行われているか執行と税金使途を厳しくチェックすることと、政策提案を実施するであると考えておりまして、一般質問や議会提案で実施している通り、多数派を形成せずとも市政チェックと提案は可能でございます。お気遣いいただき恐縮でございます。
どのような立場でどのように市政に携わりたいか存じ上げかねますが、自らの考えと意思に基づいて行動されるのがよろしいかと存じます。
自由意思に基づいて、言論主張や行動ができるのが、日本社会の素晴らしいところです。
コメントありがとうございました。