★「議員報酬」市議会議員の報酬引き下げを提案した理由。議員の給料は役務の対価として設定すべき★

 

◆「市議会議員の報酬減を提案する理由と根拠」 「現状の議員報酬が役務の対価として適切であるかの問題提起」 「市税収入の減少及び本市の財政状況を勘案し議員報酬を引き下げるべき」 「身を切る覚悟とは議員定数減ではなく議員報酬減である」 「愛知県の近隣他市との比較して知多市の5%報酬減は金額として妥当」「働かない議員に高額報酬が支払われている」◆

 

議員報酬(愛知県の自治体)
愛知県の自治体の議員給料
愛知県内市議会議員報酬



 

「知多市議会基本条例第17条第2項」に基づいて、議員報酬の5%引き下げ提案を実施いたしました。提案理由は以下に詳述いたしますが、市税収入減と一般会計予算増に対し、財政状況と費用対効果の改善のために、経費削減を目的として提案したものです。議員定数を減らすよりも議員報酬を減らすべきであるという考えも背景にございます。

 

本提案は賛成少数で否決されましたが、議員報酬の引き下げを提案した理由と根拠について記します。

 


 

●「知多市議会の議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部改正について」

 

 

本提案の趣旨は、市税収入の減少、及び、本市の財政状況を勘案し、議員報酬を5%減じて、議長報酬を現行の52万7千円から「50万円」に、副議長報酬を47万7千円から「45万3千円」に、議員報酬44万5千円から「42万2千円」に、引き下げることを提案するものです。

 

ご承知のように、地方自治体では、首長と議会議員をともに住民が直接選挙で選ぶ二元代表制を導入しており、この二元代表制は議会には議決機関としての役割を、首長には執行機関としての役割をそれぞれ与え、相互牽制を通して地方行政の民主的かつ効率的運営の確保を求めております。

 

議会には団体意思の決定を行う議事機関、また執行機関を監視する監視機関として多様な民意の反映、利害の調整、住民の意見の集約等の役割が求められておりますが、地方創生、地方分権改革の推進に伴い、議員個々の使命・役割が重要になっています。

 

一方、厳しい社会情勢や財政状況の中、将来にわたって持続可能な行政経営を行うため「知多市行財政改革プラン2016」が策定され、現在、全市、全庁挙げて、受益者負担の適正化に取り組むとともに、収支の均衡と財政調整基金の適正な残高の維持に取り組んでいただいております。

 

市議会といたしましても経費の削減は、改革の一環としてみずから率先して実施すべきものであると考え、議員報酬を引き下げるため、条例の改正を提案するものであります。

 

先に提案の要点を申し上げます。

  • 「問題」は市税収入減と一般会計予算増
  • 「課題」は財政状況と費用対効果の改善
  • 「目的」は経費削減
  • 「対策」は議員報酬5%減
  • 「効果」は年約750万円の議会費減(マイナス効果はなし)

続いて、提案理由を「立法目的と立法事実の確認の観点」、及び「知多市議会基本条例第17条第2項」に基づいて5点、議員報酬の考え方について1点、申し上げます。

 

  • ①「市税収入の減少及び本市の財政状況を勘案し議員報酬を引き下げることが望ましい」

 

知多市の市税の推移によると、市税総額は平成22年度の152億円から平成30年度の148億円と150億円を挟んだ推移で微減の傾向です。少子高齢化が確実なものとして予測され、本市の税収減が見込まれる以上、経費削減が必要であり、議会費節減のために、議員報酬を引き下げることが有用です。

 

  • ②「知多市議会議員定数検討協議会で定数減の意見の統一を図ることが困難であるとの結論を示されたこと。その中で議会経費削減のためには、協議事項に挙がった厳しい財政状況にあって、議員も身を切る報酬減が有用である」

 

議員定数の検討は、新たに協議の場を設置し、各会派の代表者により慎重に行うとの条例解説に沿って、計4回の知多市議会議員定数検討協議会が開催されました。それぞれ意見が異なり、意見の統一を図ることは困難であるとまとめられております。本市の4会派のうちの2つの会派が定数減に懸念を示しており、協議会と報告書を尊重するべきとの立場から、議員定数の削減は適切ではないと考えますが、報酬の削減は一人一人の議員の決意と身を切る覚悟があれば実現できることであり、議員報酬を引き下げることが有用です。

 

  • ③「近隣他市との比較について、5%の報酬減は金額として妥当である」

 

愛知県では本市よりも人口が少なく議員定数が20名以上の自治体が、碧南市、蒲郡市、犬山市、知立市、豊明市、清須市、みよし市と、7市あり、一方で、本市よりも人口が多く議員報酬が低い自治体が、日進市、北名古屋市、あま市と3市あり、あま市は本市よりも議員報酬が約9.8%低い金額です。また、知多市と人口がほぼ同じ8万3千人である尾張旭市は、本市よりも議員報酬が約4.7%低い金額であることから議員報酬を引き下げることは妥当です。

 

  • ④「市政の現状及び課題について、予算や決算を厳格に審査し、住民の福祉の増進に努め、最少の経費で最大の効果を挙げるためには、出来るだけ多く多様な能力を持つ人材がいることが望ましく、議員数を確保しながら経費削減をするためには、報酬減が有用である」

 

知多の統計によると本市の人口は、平成12年の8.18万人、平成22年の8.65万人、平成28年の8.60万人、平成29年の8.58万人と近年横ばい推移です。また、知多市の市税の推移によると、市税総額は平成22年度の152億円から平成30年度の148億円と150億円を挟んで推移しています。一方で、知多市の一般会計予算は、平成27年度の約251.7億円から、平成30年度の269.5億と増加しており、全体経費の節減に務めなければなりません。

 

  • ⑤「将来の予測及び展望について」、今後「朝倉駅周辺整備」や「健康増進施設の建設」、「新しいごみ処理施設の建設」など大きな事業が予定されており、議員の主な役割である「地方公共団体の意思を決定する機能」「執行機関を監視する機能」を果たしていくために、多様な視点と人員によるチェック機能が必要であり、議員数を確保しながら経費削減をするためには、報酬減が有用である。

 

85億円の巨大事業の朝倉駅周辺整備の費用対効果に大いに疑問があり、他の投資事業も山積している中、チェック機能の弱体化は問題であり、経費削減には報酬減で臨むべきでしょう。

 

  • ⑥「議員報酬は役務の対価としてあるべき」知多市に限らず市議会議員の報酬は正当化できない。

 

私も議員報酬をいただいており、専業議員として生活しております。当たり前の話ですが、自身の報酬を下げて嬉しいことなど一つもありません。そして、基本的には人件費は変動費ではなく固定費であると考えており、報酬を下げるというのは付加価値を生む政策ではなく、市を企業と例えるならば、生産性の改善は見込めますが、微々たる金額です。報酬削減が市の財政改善に抜本的な対策になるとは思っておりません。

 

それでも、議員報酬については役務の対価であることが基本と考えており、本市に限らず議会議員の報酬が役務に対して過分に設定されているのではないかと、本条例改正提案を通じて、問いたいと思います。

 

先に事実関係を整理します。「平成29年度 市議会の活動に関する実態調査結果」によると、定例会及び臨時会を合わせた全会議の平均会期日数は、全市平均88.9日、平均本会議日数は22.8日となっています。本市も同様の日数です。

 

議員の仕事は、先に申し上げた機能面の役割だけでなく、本会議や委員会の出席はもとより、様々な公務、住民の声を議会や市政に届けるため、要望や陳情を伺ったり、独自の視察や調査の実施、地域行事や地域貢献活動等があります。

 

それでも議会や委員会の拘束は、年間20日~最大で90日。市役所に登庁するのが年間60日程度の方も少なくありません。もちろん、本会議や委員会のない日に市役所に来ることが求められているわけでもありませんし、常に地域の課題の現場にいる、自宅や事務所で議会関係の仕事をしているなど様々なケースがあり、市役所に登庁することの是非を問うものではありません。

 

私が論点としているのは、議員報酬は議員の職務と職責の適切な対価としてあるべきではないかという点です。我々議員は職員の皆さまとは違います。毎日市役所に登庁して7時間45分の勤務をする等の規則を遵守することが求められる職員の給与は、生活給としての要素が強く均衡の原則を重視すべきでありますが、議員という特別職に対する報酬の支払いは、役務に対する対価であると考えられます。議員の報酬は役務の対価として過分であり、一般企業の平均給料程度を生活給として担保すれば、現状よりも幾分下げたとしても十分なものであると考えます。

 

以上、提案理由と、議員報酬の5%引き下げは、本市の財政状況改善に向けて僅かではあるがメリットが期待でき、デメリットは見あだらないという効果を申し上げ、多くの議員の皆さまのご賛同をいただきますようお願いをいたしまして、提案を終わります。

 


 

<質問と回答>

  • Q:議員報酬を5%引き下げの根拠は?
  • A:提案で申し上げた通り。市税収入減と近隣市との比較であり、他自治体との均衡を崩さない報酬減額が5%程度であると考える。
  • Q:議員報酬減額提案のタイミングの判断基準は?
  • A:知多市議会議員定数検討協議会で定数減の意見の統一を図ることが困難であるとの結論を示されたことに対し、経費削減のためには議員報酬減が有用であると考えたこと。
  • Q:事前相談や事前協議がない理由は?
  • A:時間的な余裕が少ないとのご意見は厳粛かつ真摯に受け止める。私もサラリーマン生活を10年以上経験しているので、根回しの意義や効果は理解している。しかし、事前相談や秘密会での協議は、情報公開の点から必ずしもベストであるとは考えておらず、議会で説明申し上げ審議いただくことにより、賛同をお願いするものである。
  • Q:議員のなり手不足や議員報酬では生活ができないのでは?
  • A:その問題は報酬が少ない市や町村議会の課題であると考えており、国税庁が公表している企業規模別の平均給与の資本金10億円以上の株式会社の年収635万円、いわゆる大企業給与よりも、現行より5%の報酬引き下げをしても、知多市議会議員報酬はそれを上回るため、議員報酬が少ないということはないと考える。
  • Q:報酬引き下げの提案を期間限定としなかった理由は?
  • A:市税収入の今後の減少は避けられないとの考えからであり、議員の役割と議員報酬は提案理由で申し上げた通りである。

 

(追記)議事録が公開されましたので紹介いたします。残念ながら、自らの報酬/給料を減らすことに賛成する議員は少ないのが実態です。報酬が適切な対価であれば問題ありませんが、働かず不労所得化(年間40日程度しか市役所に登庁(出勤)しない議員が大半)する議員の身分は、知多市議会に限らず、地方議会の大きな問題点であり、制度設計の瑕疵であると考えます。

 


  • 知多市議会の議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部改正について_提案理由と質疑応答
  • 知多市議会の議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部改正について_討論


 

◆「市議会議員及び市長、副市長、教育長の期末手当支給増(報酬増)に反対」◆

 

 

 

議員と市長・副市長・教育長の報酬増に反対したのは私と共産党議員団の2人でした。

 

議案第64号 知多市議会の議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部改正 について、反対の立場から討論いたします。

 

本条例改正は、職員の給与改定に準じて議員の期末手当の支給割合を引き上げるものですが、職員の給与改定は人事院勧告に沿うものです。その勧告の骨子は、

 

「民間給与との較差を埋めるため棒給(ほうきゅう)表の水準を引き上げ」るとともに

「ボーナスを引き上げ、民間の支給状況等を踏まえ勤勉手当に配分」するものです。

 

勤勉手当は俸給(ほうきゅう)や地域手当等に期間率と成績率を乗じて算出した金額を支給するものです。期間率とは、基準日以前6箇月以内の勤務期間に応じて設定されます。

我々議員は非常勤特別職であり、毎日7時間45分の勤務をする 等の就業規則を遵守することが求められる市職員とは、身分や立場が異なります。

 

議員報酬は議員の職務と職責について、役務の適切な対価として支払われることが望ましく、職員の給与改定に連動させることは適切ではないと考え、議員の期末手当の支給割合を引き上げることに反対いたします。

 

 

議案第 65 号 知多市特別職の職員で常勤のものの給与及び旅費に関する条例の一部改正について、反対の立場から討論いたします。

 

本条例改正は、職員の給与改定に準じて、市長、副市長及び教育長の期末手当の支給割合を引き上げるものですが、職員の給与改定は人事院勧告に沿うものであり、その内容と性質は、先ほどの 議案第 64 号 知多市議会の議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部改正についての反対討論で申し上げた通りです。

 

市長・副市長・教育長は常勤ではありますが、

「市長は年収:約 1750 万円」「副市長は年収:約 1400 万円」「教育長は年収:約 1300 万円」

とその職務と職責を踏まえた金額が報酬として支払われており、職員の給与改定に連動させることは適切ではないと考え、市長・副市長・教育長の期末手当の支給割合を引き上げることに反対いたします。