★「原典/出典を掲載しない記事」の問題点と日本のマスコミへの違和感~仮面女子 猪狩ともか氏の事故報道事例より~★

引用元を示さない日本の新聞の問題点

 

「仮面女子の猪狩ともか氏の事故報道に本人の公式ブログへのリンク掲載を実施したメディアは一部のみという日本メディアの異常」

 

「新聞もネットも記事には原典/出典へのリンクを示すべき。フェイクニュース全盛期に問われる報道の姿勢と信頼性」

 

「新聞やメディアの報道はパーマネントリンク(保存)を義務づけ、削除せずアーカイブ化するべきではないか?」

 

「自ら取材せず情報を右から左に流し掲載するだけのメディアに存在価値はあるのか?」

 

 

仮面女子の猪狩ともか氏が事故に遭い、脊髄を損傷して今後車椅子生活を余儀なくされるという。痛ましく辛い事故が起きてしまった。

 

→猪狩ともかオフィシャルブログ「大切なみなさまへ」

 

 

この平和な日本では、我々は基本的に今日の次は明日が来るのが当然のことであると考えているし、それを疑わずに生きている。もちろん、突然事故に遭うこともあるかもしれないし、歳を重ねれば病気になる可能性も増す。それでも人は未来に起こるかもしれない不運を想像することはなく(宝くじが当たったら?という想像はしても明日癌になったら?と誰も考えない)、自分でコントロールのできないことには、まったくもって無力である。

 

 

だから猪狩ともか氏が突然の事故に巻き込まれ、脊髄損傷という重傷を負い、車椅子生活を送ることになったというのは、初めて知る人の話であるのに、胸が締めつけられるように苦しくなる。シリアに降る爆弾は、映像を見たとしても痛みの具体的なイメージをし辛いのに対し、自分にも起こる可能性のある事故は、不運な出来事として目の前にある日常のリスクとしてリアリティがあり、想像できる分痛く辛い。

 

 

その彼女が綴る力強い言葉に感動した。すべての人にご覧になっていただければと思う。それまで健康で活発だった方が、事故に遭い、突然歩けなくなりました、車椅子生活です。という現実を突きつけられて、それでも前向きに生きようとする姿は、勇気を与える。本当に凄い人だと思う。医療の進化も日進月歩であり、一日でも早い治癒と回復を心より願いたい。

 

 

さて、ポエムを綴りたいわけではなく、今回の猪狩ともか氏のニュースは報道のあり方を改めて考えさせられる報道であったと思う。日本のジャーナリズムの酷さがわかりやすく露呈した報道のやり口であったのだ。本件は様々なニュースメディアで取り上げられたが、猪狩ともか氏のブログへのリンクを掲載していない。つまり、原典/出典を記さないメディアがあまりにも多かった。取材をせずに右から左で情報を流すだけのメディア報道の下劣さは今に始まった話でもないが、ウンザリするレベルを通り越して嫌悪感を覚えるほどに酷い。その問題点について考察し改善を願って綴ることとする。どういうことか? 今回の各社の報道を見てみよう。

 

 

●朝日新聞

→仮面女子・猪狩ともか、車いす生活に

猪狩ともか公式ブログ及びTwitter投稿へのリンクなし。

 

●毎日新聞

→仮面女子・猪狩ともか、車いす生活に 強風で看板直撃し脊髄損傷

猪狩ともか公式ブログ及びTwitter投稿へのリンクなし。

 

両媒体ともに「ORICON NEWS」からの情報提供である。猪狩ともか公式ブログの内容を引用しておきながらリンクをさせていない。そして、スポーツ新聞の報道も酷い。

 

●スポーツニッポン

「仮面女子」猪狩ともか 脊髄損傷で車いす生活に 「絶望」も前向く

猪狩ともか公式ブログ及びTwitter投稿へのリンクなし。

 

●サンケイスポーツ

仮面女子の猪狩ともか、脊髄損傷を報告「今後は車椅子での生活です」

猪狩ともか公式ブログ及びTwitter投稿へのリンクなし。

 

●日刊スポーツ

→乙武洋匡氏、大けがの猪狩ともかへ「応援させて」

猪狩ともか公式ブログ及びTwitter投稿へのリンクなし。

 

 

何人たりとも個人の表現の自由を侵害するべきではなく、誰が何を言おうと、それが誰かを傷つけたり迷惑をかけたりするものでなければ、その発言を否定するものであってはならない。これは前提条件として共通認識として持っている。しかし、一人の女性が不幸な事故で重傷を負い、後遺症が残った件において、関係のない第3者のお見舞いだか応援だかわからないメッセージを載せて宣伝することは、恣意的なマーケティングに近く、いかがなものだろう? 乙武氏が何を発言しようが本人の自由であるし、彼の応援したいという気持ちをどうこう言うつもりはない。ただし、メディアがそれに便乗するべきではないという意見だ。その中で、出典/原典を明記してリンクを掲載したまともな報道も数少ないメディアもある。

 

 

●BuzzFeedNEWS

→看板の下敷きとなった「仮面女子」猪狩猪狩ともかさん、脊髄損傷で車椅子生活

猪狩ともか公式ブログ及びTwitter投稿へのリンクを掲載。

 

●ハフポスト

→脊髄損傷の猪狩ともかさん、車椅子での芸能活動に意欲 「越えられない試練はない」

Twitter投稿へのリンクを掲載。

 

 

出典を明記することの必要性(重要性)についてはWikipediaがわかりやすく解説している(Wikipedia:出典を明記する)。

 

 

1.内容に問題がないか確認できる - ウィキペディアの記事は、検証が可能である必要があります。文献が示されていれば、文献を入手するか図書館で閲覧することにより、どのような情報が書かれているか確認することができます。また、執筆に用いた情報源の著者・年代や文脈が明らかになることにより、中立的な観点かどうか調べやすくなります。
2.読者がさらに調べるときの参考になる - 読者がその情報について、もっと知りたいと思ったときに、文献リストがあればそこから調査できます。
3.著作権・著作隣接権の遵守 - 著作権法に従って参考文献の記述を引用する場合は、引用の範囲と引用元を明示しなければなりません(Wikipedia:著作権およびWikipedia:著作権で保護されている文章等の引用に関する方針を参照)。また、引用でない部分についても情報源を明記することで、情報源を違法に丸写ししていないかどうか確認しやすくなります。

 

 

フリーの百科事典が課している最低限のルール(マナー)ですら、日本の新聞メディアには徹底されておらず、世界の非常識を平気で発信しているわけだ。オールドメディアは死んだと言われる所以だろう(ここまで酷いのは日本だけであるが)。この新聞報道やメディア記事の報道のあり方についての問題は、様々なところで指摘がされているが、改善する様子はまったく見られない。もっとも端的にわかりやすく指摘されているのは本記事(→メディア時評使い勝手のいい記事を=高崎順子・ライター)である。

 

 

筆者はフランスの制度や法令を調べることが多い。と書くと大仰だが、かの国の新聞記事では法令番号や通知日が明記され、原典に当たるのは困難ではない。デジタル版には通知・法令へのリンクも張られている。
その習慣から日本の新聞を見ると、どうも使い勝手が悪い。まず政府発表の通知や法令に、正式名称や通知日の記載がない。そして同じ通知でも、新聞により報道時期が異なる。例えば昨年12月21日発表、厚生労働省の待機児童対策関連通知「『子育て安心プラン』の実施方針について」の毎日新聞デジタル版の報道は1月7日。日経新聞同は同4日、朝日新聞同は昨年12月31日などで、3紙とも通知名の記載はなかった 。

 

 

日本は大手新聞社の記事でさえ、原典/出典へのリンクを実施しないどころか、出典名の正確な記載さえないことが多々ある。これは日本のマスメディアのジャーナリズム精神の欠如であると思う。原典/出典を掲載&リンクすることは、正確な情報を発信することと、参照元へのリスペクトがあるかという意識の問題である。なぜなら、参照元へのリンクは、ほんの少しの手間でしかないからだ。それで情報流通の信頼性の担保と、出典元の著者の権利も守られ、そしてGoogleのアルゴリズムから被リンクが評価され、著作物の品位も保たれる。それをやらないというのは、メディアの傲慢以外の何物でもないだろう。

 

 

新聞記事の保存については以下のサイトでわかりやすく指摘されているので、ご覧になっていただければと思う。記事の掲載が一定期間後に終了し、削除されて閲覧できなくなるというのは由々しき事態ではないだろうか?

 

→ネット上から日に日に新聞記事が消えてゆく、既に参照・引用はできない

 

→科学報道のダメ記事 of the year (2014)

 

 

最後に、余計なお世話で俗物的な話になるが、猪狩ともか氏の所属事務所は彼女への支援金(募金)を募ったら良いのではないかと考える。それが所属組織として彼女に対する一番の支援になると思う。にも関わらず、事故から約1ヵ月が経ち、彼女の情報発信を事務所は紹介しただけである。そして、その取り組みをメディア各社は宣伝すれば彼女の一助になるだろう。彼女の不幸な事故を報道することで、広告を踏ませて小銭を稼ぐという守銭奴なジャーナリズムモデルから、少しでも役に立つあり方への改善を期待し、猪狩ともか氏の回復を願ってまとめることとしたい。