★「KADODE OOIGAWA」島田市の賑わい交流拠点施設の所感(20260514訪問)★

 

 地域資源を活用した観光振興施設として全国的に注目を集めている島田市の賑わい交流拠点施設「KADODE OOIGAWA」を視察した。来場者実績は、開業から約1年4か月で100万人、約2年半で200万人、2024年には300万人、さらに2025年には400万人を達成しており、地方の交流施設としては高い集客力を示している。一方で、地方自治体による大型複合施設整備の課題を象徴する事例でもあると感じた。

 

 本施設は2020年に開業し、JAおおいがわ、島田市、大井川鐵道などが連携して整備した。農産物直売所、飲食施設、緑茶体験、キッズパーク、観光案内機能などを備え、新東名高速道路・島田金谷IC隣接という優れた立地条件を活かして高い集客を実現している。実際、来場者数は百万人/年に達しており、道の駅機能や農産物直売所については、地元農業支援や地域産品PRの面で一定の成果を上げていることは評価できる。

 

 しかしながら、事業全体を冷静に分析すると、多くの課題が見えてくる。特に問題なのは、施設規模と投資額に対して、持続可能な収益構造が見えにくい点である。

 

 KADODE OOIGAWAは、単なる道の駅や農産物直売所ではなく、レストラン群、体験型施設、観光演出設備、子ども向け空間などを複合化した大規模施設となっている。そのため、建設費だけでなく、運営維持費、人件費、設備更新費、光熱費など固定費負担が極めて重い構造となっている。地方の交流施設では典型的な課題であるが、来場者数が多いことと、事業採算性が高いことは必ずしも一致しない。特に体験施設やキッズ施設は収益装置というより集客装置としての性格が強く、維持管理コストに対して直接的な収益を生みにくい。

 

 さらに重要なのは、本事業において整備費用の投資回収は現実的に見込めないだろうという点である。施設整備には多額の公的資金(島田市の負担金:約14億円)やJA関連投資(JAおおいがわ(大井川農業協同組合)投資額:約34億円)が投入されているが、赤字経営の状態であるとのことである。仮に一定の営業黒字が出たとしても、減価償却費や将来的な大規模修繕費まで含めれば、長期的に投資回収できる可能性は極めて低いと考えられる。まして、現状では単年度黒字すら安定的に達成できる見込みは乏しく、実質的には「賑わい創出」を目的とした政策的施設の側面が強い。

 

 つまり、本施設は商業施設というより、「行政主導型地域振興インフラ」として理解すべき事業であり、純粋な経済合理性のみで成立しているわけではない。そのため、「来場者数」という成果だけで成功と評価するのは危険である。本来問われるべきは、「投入された公費やJA資金に対して、地域全体へどれだけ持続的な経済波及効果が生まれているか」である。

 

 また、島田市のような人口減少局面にある地方都市において、これほど多機能・大規模な複合施設を整備する必要が本当にあったのかという疑問も残る。道の駅や農産物直売所機能だけであれば、よりコンパクトで低コストな整備でも十分成立した可能性がある。しかし実際には、多数の複合機能を盛り込んだ結果、維持費負担の大きいオーバースペック施設となっている側面は否定できない。JAおおいがわも苦しいだろう。

 

 特に今後は、施設老朽化による修繕更新費が確実に発生する。地方自治体財政が厳しさを増す中、将来的に追加公費投入が必要となれば、市民負担の観点からも議論は避けられない。大型交流施設は開業時には話題性で集客できるが、10年後、20年後に持続可能かどうかこそが真の評価軸である。

 

 総じて、KADODE OOIGAWAは、地域農業や観光振興への一定の貢献は認められるものの、過大投資・低採算・高維持費という地方大型施設特有のリスクを抱えた事業でもある。地方創生の名の下に「賑わい」を重視するあまり、将来世代への財政負担を過小評価してはならず、今後はより小規模・高効率・持続可能性重視の公共投資への転換が求められるのではなかろうか。

 

●静岡県のほぼ中央に位置する、2020年秋オープンのお茶と農業の体験型フードパーク「KADODE OOIGAWA」