★加計学園の獣医学部新設問題が明らかにした政治とマスコミの機能不全★

加計学園問題

※画像出典:学校法人加計学園

 

国家戦略特区による加計学園の獣医学部新設の本当の問題点 | 野党の馬鹿騒ぎにマスコミが便乗してみんな不幸になるという異常事態

 

 

学校法人加計学園が愛媛県今治市の国家戦略特区に大学の獣医学部を新設する計画について,安倍総理の関与をめぐって国会が紛糾しました.森友学園に引き続きのスキャンダルとして,野党は中身のない批判を馬鹿の一つ覚えのようにわめき散らし,テレビや新聞をはじめとするマスコミは,論点を明確にするでもなく,無能な議員の下品な野次をあたかも正義の味方のように報道するばかり.本当にこの国の政治は機能不全であり,マスコミは腐っているとひしひしと感じました.

 

あらかじめお断りしておきたいのは,学校法人加計学園の獣医学部の新設に問題がないと言っているのではありません.はっきり言って非常に筋が悪い案件であると思いますし,加計学園を応援する気は微塵もありません.ただ,安倍総理の意向を忖度しただの(総理のご意向などと記した文科省文書),加計学園理事長は安倍総理のお友達だから優遇装置をしただのの指摘は,問題の本質をまるでついておらず,生産性の欠片もない議論です.不正があったと指摘したいのなら,何が不正であるのか,どのような証拠があるのかを明らかにするべきでしょう.

 

ウンザリするような議論と報道が続く加計学園の獣医学部新設問題につきまして,何が問題なのか? 考察したいと思います.

 

 

●加計学園「岡山理科大今治キャンパス」に誰が志望するのか?●

 

加計学園獣医学部

多くの大学がキャンパスを都心回帰する中,今治駅から徒歩30分のキャンパス

 

加計学園の獣医学部新設問題はこの一言に尽きると考えます.文部科学省と獣医師会が「全国的に獣医師の数は足りている」として、50年以上にわたって獣医学部の新設を認めて来ませんでした.それが規制緩和による特区制度で獣医学部が新設され,この既得権益にメスが入ったのは評価されることでしょう.近年,ペット関連市場が拡大し獣医のニーズが高まっている中(犬の飼育頭数は減少し猫は横ばい傾向),獣医への参入が拡大し競争が生まれることで,獣医を選べる選択肢が増えるというのは,ペットの飼い主にとってありがたいことであり,文句を言う人はいないでしょう.

 

一方で,獣医を志す若者にとってはどうでしょうか? 加計学園の獣医学部事業規模(計画)によると,獣医学科入学定員160 人とのことで,これまで獣医学部の定員は全国の大学で合わせて930人と定められていたものが,大幅な拡大により獣医学部に進学するチャンスが生まれます.

 

獣医学系入試における過去 12 年間(平成16年度~28年度)の志願倍率を見ると,国立大が9倍台~6倍台,公立大が14倍台~7倍台,私立大は16年度が約31倍, 22年度が約19倍.28 年度は約 20 倍であるとのことで,高倍率な状況で競争が激しいことがわかります.(※出典:旺文社教育情報センター29年2月レポート)これだけの志願者がいるにも関わらず,これまで獣医学部の定員拡大や新設を規制してきたというのですから,既得権益の抵抗は相当なものであり,文科省は何をやっていたのだという話です.

 

加計学園問題

 

獣医になりたいという若者は多くいて,獣医師へのニーズもある.獣医市場も拡大中である.だから特区制度を活用した獣医学部の新設自体は評価されるべきでしょう.それを民進党は「国家戦略特区を廃止する法案を提出する方針を固めた」との報道ですので,頭が悪いどころか,救いようのない無能なのでしょう.

 

問題は,獣医学部進学を望む若者が加計学園「岡山理科大今治キャンパス」に進学したいと思うような大学になるか?という点であると考えます.特区を活用して新たに運営する大学が,素晴らしいプロジェクトであると定量的に分析できれば,経緯が少しくらい不透明でも批判を浴びることはないでしょう.そもそもの点に疑問が投げかけられているのが本問題の闇が深いポイントです.

 

ここで獣医学部の現状を少しだけ整理しましょう.日本大学の初年度学費は245万円,北里大学の初年度学費は244万円です.一方で国公立大学の初年度学費は約82万円.私立大学の3分の1の水準です.獣医を志す若者や保護者の多くが望むのは,学費の安い国公立獣医学部であり,今回加計学園の獣医学部の定員160名を,国公立(獣医)11大学の定員拡大で対応して貰った方がよほどありがたいのではないでしょうか?

 

新たに開校する加計学園「岡山理科大今治キャンパス」は,その名の通り愛媛県の今治市に位置します.失礼ながら,瀬戸大橋で繋がっている香川県高松市と比べても,本州からのアクセスがとても不便なところです.つまり愛媛県や近隣に在住の方以外は下宿や一人暮らしを余儀なくされることになります.そうすると,大学に通うために,学費プラス年間で最低120万円以上の費用がかかる.4年間で1,400万円程度のお金がかかる加計学園の獣医学部にいったい誰が好んで進学すると言うのでしょうか?

 

 

●加計学園獣医学部新設に133億円もの補助金を投じる価値はあるのか?●

 

加計学園今治キャンパス

車がなければ通学出来ない僻地のキャンパス

 

次に費用対効果の問題です.今治市は建設用地の37億円無償供与だけでなく,建設補助金を最大で96億円支給する事を決めており,合計133億円が補助金として投じられる予定とのことです.大学が開校したら私立大学等経常費補助金等が毎年交付されますので,これからも補助金がじゃぶじゃぶ投入されます.個人的に定員割れ学部等を持つ大学等には,経常費補助金の減額・不交付を徹底するべきだと考えますが,それは置いておいて,133億円を投じて美味しい思いをするのは誰でしょうか?

 

建設事業者以外にほとんど誰も潤わないように思えるのが本問題の絶望的な点でしょう.今治市は財政支援による今後の財政悪化が危惧されるので,反対する市民も多いでしょうし,将来この支援が大きな負担として間違いなく市財政にのしかかってきます.そして,先ほど示したように学費と生活費の観点から,定員割れする可能性も大いにあります.

 

であるならば,やはり既存の国公立大学獣医学部に投資をして,定員を拡大すべきではないでしょうか? 現実問題として人口の東京集中が進み,地方は緩やかに衰退しています.獣医のニーズは地方で大きいのものの,獣医が働きたいのは東京をはじめとする都心部です.需要と供給という市場ニーズに合わせて規制を改革するべきなのに,地方創生という名の目標と混同することにより,経済合理性がおろそかにされている.今回の加計学園今治キャンパスの誘致により,今治市が発展する見込みがあれば,投資する意義や価値があるかもしれませんが,残念ながら今治市の財政を悪化させるだけで,明るい展望は描けそうにもない.本当に馬鹿げていると思います.

 

大学を誘致して発展した自治体としては,立命館大学が滋賀県草津市にびわこ・くさつキャンパス(BKC)を開設した事例があります.地域活性化が見込まれたBKCの開設に当たっては,建設用地の購入費用と造成費用を合わせ、総額135億円を県と市が負担するなど,積極誘致を展開して誘致を実現しましたが,この金額の是非が問題になりました.

 

大学誘致の成功事例と一時期もてはやされましたが,学部生と院生合わせて約1万7千人が在籍していたものが,経営学部と大学院経営学研究科の大阪府茨木市の大阪いばらきキャンパスへの移転により,数千人規模の学生が流出しました. 1万7千人という規模の大学であり,大阪から1時間弱,京都から30分少々というアクセスで,2流(3流?)ではあるかもしれないが,それなりの知名度のある立命館大学だから当初は成功したのであり,アクセス不便な加計学園今治キャンパスが地域発展の起爆剤になるはずもありません.

 

 

●税金を無駄遣いすることなく,合理的に投資すべき●

 

加計学園獣医学部

(国家戦略特別区参考資料)キーワードを詰め込み過ぎw 上手なポンチ絵を描けるようになりたい.

 

私が以前より感じていることですが,他人が他人のためにお金を使うと,ここまで無責任になれるのかということが証明された事例と言えるでしょう.どんな人でも自分のお金は大切にしますし,自分のお金を他人のために使うときにも慎重になります.他人のお金を自分のために使うときにも頭を働かせると思います.それが税金を誰かのために使う時には,ここまで無関心になれる.あってはならないけれども,不正をすることにより私腹を肥やしつつ,周りも発展させたり特典があるということならまだ理解できますが,みんな不幸になるという悪い冗談のような現実です.

 

 

一番絶望的なのは,このような無駄遣いを正確な数字と情報に基づいて,論理的かつ科学的に問題を指摘し,正すことができる野党やマスコミが存在しないことでしょう.感情的かつヒステリックに批判をする野党議員とそれに便乗するマスコミを見ていると,政治になんて欠片も期待することは出来ないという心理が,国民に広まるばかりでしょう.自民党の自浄作用に期待する他に選択肢がないというのが,日本の政治の残念な現実です.地方行政の末端にいるものとして,少しでもこの歪んだ状況が解決されることを期待しつつ,批判ばかりで対案もない無能な輩にならないよう努力し続けていきたいと思います.

 



 

●加計学園の獣医学部新設問題のまとめ●

 

Twitterで発信されていた興味深い情報をまとめました.古い順番に時系列です.紹介している情報がすべて正しいと言うつもりはありませんが,色んな考え方や解釈があることを知っていただきたく,参考にしていただければ幸いです.