経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度である。私の個人的な思想(主張)としては「従業員給与補償は事業主経由ではなく個人に直接助成すべき」(休暇補償を個人が申請して受給)という考え方だけれども、社会の安定にとって必要不可欠な制度(仕組み)である。
新型コロナウィルスへの経済への影響を考慮して、様々な支援策が講じられている。スピード感や支援内容に疑問のあるものもあるが「雇用調整助成金の特例措置の拡大」は英断であると思う。
世の中には大きく分けて「簡素な手続き」と「煩雑な手続き」の2つが存在する。使い勝手の良い制度もあれば活用するハードルが高い制度もある。そして後者「煩雑な手続き(申請書類が多くやっかい)」の筆頭格が「雇用調整助成金」であった。
通常時(以前)は、準備する申請書(書類)の量と手間を考えると個人事業主や中小企業が活用するのは非常に困難な助成金。それが「新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大」により申請書類は簡素化された。これは大変に素晴らしい改善であると評価したい。
雇用調整助成金の質問を受ける機会が増えたので、申請方法を理解するために
「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」を熟読した。
読んで楽しい資料ではないけれどもよくまとまっている。特に必要書類の簡素化と具体的な記載例はわかりやすい。わずかな書類と簡素な手続きで申請できるようになった。多忙を極める現場の職員の皆さまや対応いただく全ての皆さまに感謝の気持ちでいっぱいである。
繰り返すが私は「雇用調整助成金の特例措置の拡大」を肯定して支持する。それでも、現在の「雇用調整助成金の周知/案内」は悪戯に問い合わせを増やし現場職員が疲弊する可能性が大きいと考え、問題点を綴り改善提案することとしたい。
●「雇用調整助成金の支給要件を冒頭に記載すべき(申請対象及び申請条件について)」
「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」には、P4に助成金支給要件として「雇用保険適用事業主であること」と記載されている。
ここで混乱する。というのも「雇用調整助成金の特例措置の拡大案内資料」には「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主を対象とします」とあり、特例措置の助成内容のポイントとして「雇用保険被保険者でない方」も対象とするとあるからだ。
1 支給対象となる事業主
(2) その他の要件本助成金を受給する事業主は、その他次の要件を満たしていることが必要です。
① 雇用保険適用事業主であること。② 「受給に必要な書類」について、a 整備し、b 受給のための手続に当たって労働局等に提出するとともに、c 保管して労働局等から提出を求められた場合にそれに応じて速やかに提出すること。③ 労働局等の実地調査を受け入れること
(非)雇用保険適用事業主の元で働く従業員/労働者(週20時間未満の労働者)は休業の対象となるのかならないのか?
問い合わせをしたい気持ちを抑え他の資料を調べることにする。徹底的に調べて、それでもわからない(記載されていない)ことがある場合にのみ問い合わせをするのが真摯な姿勢であろう。「雇用調整助成金FAQ」にはこのように記載されている。
(3)事業主の要件問14:事業主が雇用保険に加入していませんが、労災保険に加入していれば助 成対象になりますか。答:労災保険適用事業所、暫定任意適用事業所であれば、緊急対応期間(4/1~ 6/30)中は、雇用保険被保険者とならない労働者の休業についても助成対象と なります。
つまり雇用調整助成金が適用される(雇用調整助成金が支給される)ためには、申請者(企業/事業主)が「雇用保険適用事業主」もしくは「労災保険適用事業所」「暫定任意適用事業所」でなければならない。
この「申請事業主の要件」は冒頭に記すべきだろう。
そうしなければ「雇用保険適用事業主」でも「労災保険適用事業所」でもない事業者からの問い合わせや申請を避けられない。雇用調整助成金を受給できると思って問い合わせ/申請した個人事業主は落胆するだろう。最初に要件(対象条件)を示すことを何よりも優先記載事項とすべきだと考える。
対象とならない者が問い合わせや申請をすると受付側も時間と労力の無駄になる。そして申請者が対象にならないのか!と怒りや憎しみの感情を抱く。5W1Hではないが「Who(だれが)」「What(なにを)」「How(どのように)」申請するのかを1枚紙でまとめれば良いだけだ。
もちろん考え方として「雇用保険適用事業主」以外は想定しないという考え方も理解できなくはない。行政側(役所側)の正論だ。
雇用保険については、労働者を雇用する事業は、その業種、規模等を問わず、農林水産業の一部を除きすべて適用事業となり、その事業主は、労働保険料の納付、雇用保険法の規定による各種の届出等の義務を負うことになる。とあるからだ。
しかし、労働者は原則として被保険者となるものの「1週間の所定労働時間が20時間未満である方」他は、雇用保険の適用除外となるなど雇用形態等により被保険者とならない場合もある。ここが問題なのだ。
実態として、個人事業主が雇用する短時間アルバイト/短時間パートは「雇用保険」に加入していないケースが少なくない。法律を遵守していないのではなく「所定労働時間が週20時間未満」であるから雇用保険の適用除外となってしまっているのだ。
働き方をイメージして貰えれば想像できる。「1日5時間×週3日のアルバイト」は週15時間労働となるので雇用保険の被保険者とはならない(雇用保険に加入させる義務を事業者が負わない)。
週15時間労働でも時給1000円なら月給6万円になる。扶養控除を受けるために103万円以下の年収に調整している主婦パートや学生アルバイトの方は何百万人いるだろう。「雇用保険適用事業主」の元で働いていなければ彼ら彼女らは雇用調整助成金の対象労働者とはならない。
だから国会議員の皆さまには是非以下の特例措置をお願いしたい。
「雇用保険適用事業主 以外の事業所で働く労働者も雇用調整助成金の支給対象とするため、支給対象とする事業主の要件を緩和する(助成金を受給する事業主は雇用保険加入を問わない)」
※ “第I部 受給の手続き 1支給対象となる事業主 (2)その他の要件 の ①雇用保険適用事業主であること”を削除する。
もしくは
「事業主の雇用保険の事後申請(雇用保険適用事業所設置届)を認める」
としていただきたい。こちらの方が運用は簡単だろう。
そして、現場/問い合わせ窓口「学校等休業助成金・支援金、雇用調整助成金コールセンター(0120-60-3999)」や、都道府県労働局や公共職業安定所(ハローワーク)がパンクしているので「申請事業主の要件」を冒頭に記して「Who(だれが)」「What(なにを)」「How(どのように)」申請するのかをまとめた1枚紙の資料の掲載を「雇用調整助成金」TOPページにお願いしたい。
そもそも「電話問い合わせ」は現場の稼働を増やすだけで疲弊を生み、問い合わせ者の怒りと憎しみを生むリスクが高いので止めた方が良いのではないか?よって「フォームとチャットで受付すれば良い」という考えなので近々それを綴ることとする。
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