★学校図書館の利用可能時間拡大及び学校司書配置について★


 

令和2年(2020年)3月議会(第1回定例会)一般質問

 

知多市議会議員 川脇裕之

 

「学校図書館の利用可能時間拡大及び学校司書配置について」

 

(1) 学校図書館の開館時間について

① 小学校図書館について

② 中学校図書館について

(2) 学校司書について

① 本市の配置状況について

② 知多半島近隣4市の配置状況について

 

◆質問

 

◆9番(川脇裕之) 

 

 皆様、こんにちは。さきの通告に基づきまして、学校図書館の利用可能時間拡大及び学校司書配置について質問いたします。

 

 学校図書館は、図書館資料を児童生徒や教員の利用に供すること等により、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童または生徒の健全な教養を育成することを目的として設置されており、主に3つの役割を担うとされています。

 

 1つに、読書活動や児童生徒への読書指導の場である読書センター機能、1つに、学習活動を支援し、授業の内容を豊かにして、その理解を深める学習センター機能、1つに、情報の収集・選択・活用能力を育成する情報センター機能。文部科学省発行の「みんなで使おう!学校図書館」リーフレット資料には、学校図書館は読書好きを増やし、確かな学力等を育む施設ですと記載されており、期待する効果として、読書好きの子どもを増やし、確かな学力、豊かな人間性を育む、探究的な学習活動等を行い、子どもの情報活用能力を育む、授業で蔵書、新聞等を利活用し、思考力、判断力、表現力等を育むことなどを掲げています。

 

 私は、さきの2019年12月議会の一般質問で、学校施設環境の充実に関連して、学校図書館の蔵書数とハード面について伺いました。文部科学省の平成28年度学校図書館の現状に関する調査によると、全国の学校図書館における1校当たりの蔵書冊数平均は、26年度末時点で、小学校8,778冊、中学校1万615冊ですが、本市はいずれの学校もこの冊数を上回っており、図書館資料面では充実に向けた取組が図られていると評価いたします。

 

 一方で、学校図書館の充実には、図書館資料だけではなく、効果的な運用と人材の充当が必要であると考えます。

 先日、中学生のお子様を持つ保護者の方からこんな相談を受けました。中学校図書館の鍵が放課後に閉まっており利用できない、私はこれを聞いて衝撃を受けました。というのも恥ずかしいことに、放課後に中学校図書館の鍵が閉まっているという放課後閉館の実態を知らず、以前別の方から放課後に学習する場所がなくて困っていると伺った際に、学校の図書館で勉強するのがよろしいのではないかとお答えしたことがあるからです。自分の無知を恥じると同時に、なぜ放課後に学校の図書館が利用できないのか、疑問を持ちました。学校図書館は読書好きを増やし、確かな学力等を育む施設とされています。しかし、その施設を利用する十分な時間が生徒に提供されていません。とするならば、これは改善すべき課題ではないでしょうか。どこに問題があるのかを明らかにして、解決に向けて取り組む必要があると考えます。

 

 そこで、学校図書館の利用可能時間拡大及び学校司書配置について質問いたします。

 

 1点目、学校図書館の開館時間についての1つ目、小学校図書館について。

 2つ目、中学校図書館について。

 2点目、学校司書についての1つ目、本市の配置状況について。

 2つ目、知多半島近隣4市の配置状況について。

 

 以上、お伺いし、壇上からの質問といたします。答弁よろしくお願いします。

 

◆答弁

 

◎市長(宮島壽男) 

 9番 川脇裕之議員の御質問にお答えいたします。

 御質問の1番目、学校図書館の利用可能時間拡大及び学校司書配置についてでございますが、未来を担う子どもたちの学びの場である学校における学習環境を整えることは大切なことであります。

 学校図書館は学校図書館法において、児童または生徒及び教員の利用に供することによって、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童または生徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校設備とされております。

 この学校図書館が充実し、活用されることで、子どもたちの豊かな人間性はもち論のこと、思考力や判断力、情報活用能力が育まれるものと考えております。

 御質問の1点目及び2点目につきましては、教育部長から答弁させますので、よろしくお願いします。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の1番目、学校図書館の利用可能時間拡大及び学校司書配置についての1点目、学校図書館の開館時間についての1つ目、小学校図書館についてでございますが、小学校では全ての学校で2時間目と3時間目の間の20分から30分間の大放課と昼放課の15分間に貸出しのために開館しており、佐布里小学校と旭南小学校では、始業前にも10分間程度の開館時間を設けて利用することができます。

 次に、2つ目、中学校図書館についてでございますが、中学校では全ての学校で昼放課の15分から20分間に貸出し等のために開館しており、知多中学校と東部中学校では放課後にも15分程度の開館時間を設けて利用することができるようになっております。

 次に、2点目、学校司書についての1つ目、本市の配置状況についてでございますが、本市では現在、各学校に学校図書館の経営、運営、図書委員の指導などを中心となって行う司書教諭が配置されておりますが、学校図書館の貸出し、返却や図書の紹介、館内整備などの職務に専ら従事する学校司書は配置しておりません。

 次に、2つ目、知多半島近隣4市の配置状況についてでございますが、半田市は小中学校18校に非常勤職員を各1名、東海市は小学校12校に非常勤職員を各1名、大府市は小中学校13校を臨時職員2名で巡回する配置、常滑市は配置していないと伺っておりますので、よろしくお願いします。

 

【再質問①】

◆9番(川脇裕之) 

 答弁ありがとうございます。ただ今お答え頂いた内容について再質問をいたします。

 最初に、1点目の2つ目に関連して、利用状況を確認いたしたく、再質問の1件目、中学校図書館の利用人数、貸出冊数について伺います。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、中学校図書館の生徒の利用人数は、全ての学年の生徒指導や学習、読書の授業時間等で、学校図書館を利用していますが、利用人数については数えておりません。また、貸出冊数は今年度1月末で約6,000冊となっていますので、よろしくお願いいたします。

 

【再質問②】

◆9番(川脇裕之) 

 次に、本年度の利用状況をお答えいただきましたが、時系列データを確認いたしたく、再質問の2件目、過去3年間の中学校図書館の利用人数、貸出冊数についてお伺いします。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、利用人数については数えておりません。貸出冊数については、平成30年度は約7,600冊、29年度は約7,400冊、28年度は約7,900冊ですので、よろしくお願いいたします。

 

【再質問③】

◆9番(川脇裕之) 

 次に、学校図書館がどのように運用されているのかを確認いたしたく、再質問の3件目、学校図書館の担当及び鍵の運用について伺います。

 

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、学校図書館については、学校長の管理の下、各学校の学習指導部会等の図書館を担当する教員が配置されております。

 また、国の学校図書館ガイドラインでは、図書委員等の児童生徒が運営に主体的に関わることが有効とされており、本市においても図書委員等の児童生徒が図書館の運営に関わっています。

 鍵の運用については、小中学校ともに教職員が鍵を管理しています。貸出し時間や学習時間などの前後には、教職員が状況を確認し、図書委員の児童生徒などに、図書館の開閉を任せることもありますので、よろしくお願いいたします。

 

【再質問④】

◆9番(川脇裕之) 

 次に、再質問の4件目、放課後に学校図書館を開館しない理由について伺います。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、学校図書館の運営は、小中学校ともに委員会活動の一環として、教員の指導の下で、各学年の児童生徒が行っています。こうした中で、小学校では集団下校を実施していることなどにより、授業後の開館時間の確保が難しい状況であります。

 また、中学校では、放課後には部活動があります。図書委員の生徒が部活動に所属していること、教職員も部活動の顧問となっていることなどにより、開館の状況が異なっておりますので、よろしくお願いいたします。

 

【再質問⑤】

◆9番(川脇裕之) 

 図書館の運用は、学校司書を配置することで児童生徒の負担が軽減、若しくは解消されると考えます。そこで、2点目の1つ目に関連して、再質問の5件目、学校図書館に学校司書を配置していない理由について伺います。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、学校司書の配置や図書の整備等の経費が使い方を特定しない地方交付税の措置とされている中で、本市では蔵書等の図書館資料の充実に努めてきたところであります。

 平成27年施行の改正学校図書館法の附則において、国は学校司書の資格や養成の在り方等について検討することとされ、28年10月にその報告書を公表いたしました。この報告書において、学校司書の資格の義務づけは困難とされ、大学等のモデルカリキュラムの履修者の配置を促進することが適切とされております。

 司書教諭と学校司書が連携、協力して、学校図書館を運営することが重要とされる中で、各学校に配置される司書教諭については、現状、教科等の担当を持ち、授業時間数の軽減等はありません。

 こうしたことから、現状、国や県に司書教諭の専任化や財政支援措置の拡充を要望しているところでありますので、よろしくお願いいたします。

【再質問⑥】

◆9番(川脇裕之) 

 中学校図書館の鍵が閉まり、放課後利用できないというのは、情報の収集・選択・活用能力を育成する情報センター機能を十分に満たせておらず、改善すべき状態であると考えます。

 そして、生徒や保護者のニーズを把握して、現状を定量的、定性的に分析することも重要です。

 そこで、再質問の6件目、生徒や保護者に学校図書館の開館時間に関する利用意向調査を実施する考えについて伺います。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、昨年9月から10月にかけて、「子ども読書活動に関するアンケート」として、市内各学校の小学5年生と中学2年生の各1クラスに、紙面による調査を実施しています。また、市内の小学4年生から中学3年生までを対象に、インターネットによるアンケートも実施しております。

 本調査において、学校図書館を多くの人に利用してもらうために必要なことを設問とし、この中で頂いた御意見としましては、新しい本を増やす、本の種類を増やすという御意見が多く、開館時間を増やすとの御意見は44件の自由意見の中で2件となっています。

 なお、保護者の皆様の意向については、児童生徒の意見にある程度反映されているものと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 

【再質問⑦】

◆9番(川脇裕之) 

 実施した調査では、開館時間を増やすとの意見は少なかったとのことですが、学校図書館を多くの人に利用してもらうために必要なことに対する意見を求める質問への自由意見回答を基準に、学校図書館の開館時間延長を求める需要は少ないと解釈することは無理があると考えます。単独でアンケート調査を実施することは、児童生徒及び教職員に負担をかける可能性がありますが、定期調査の項目見直しであれば、新たな負担は発生しませんし、児童生徒が学校図書館の放課後閉館をどのように考えているのか、定量的な分析が可能な情報を収集することは有益であると考えます。

 そこで、再質問の7件目、読書や図書館利用に関連する調査を今後、実施する際に、学校図書館の放課後利用希望項目を問う考えについて伺います。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、今後、図書館に関する意向調査等を実施する際に、検討したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 

【再質問⑧】

◆9番(川脇裕之) 

 先ほど司書教諭についての言及がありましたが、「みんなで使おう!学校図書館」リーフレット資料によると、司書教諭が学校図書館に関わる業務に携わっているのは、平均週1時間程度であり、学級担任等と兼務であることが多く、学校図書館の運営等に十分に携われていない実態があるとされています。

 学校教職員の多忙は御存じのとおりで、司書教諭が学校図書館の実務的な運用を担うのは困難な状況です。

 2015年に学校図書館法の一部が改正され、第6条において、学校には司書教諭のほか、学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童または生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員、学校司書を置くよう努めなければならないという条項が加わりました。これは望ましいではなく、努めなければならないとの努力義務ですので、本市も取り組む必要があると考えます。

 学校司書を配置している多くの自治体では、司書資格を要求しておりませんし、資格不要若しくは司書補を採用して配置しております。

 また、学力や教育面でも学習できる環境や施設は重要です。昨今、教育面でも都市と地方の格差が顕在化しております。

 2018年度の文部科学省学校基本調査によると、東京都の私立中学校に通う割合は24.8パーセント、東京都の資料によると文京区の公立小学校卒業生で私立中学校に進学した生徒の割合は40パーセントを超えています。富裕層は子どもの教育に多額の資金を通じて、私立中学への進学を進めている実態がうかがえます。

 一方で、文部科学省の平成28年度子どもの学習費調査の結果によると、年間の学習塾費は公立中学校が約20万2,000円、私立中学校が約14万4,000円です。私立中学生より公立中学生が学習塾費を多く投じていることが分かります。塾に行く理由は、環境や教材、講師などそれぞれでしょうが、児童生徒の自発的、主体的な学習活動をする環境が公教育で十分に提供されていないのではないかと、懸念しております。これは学校図書館が学習センター機能を積極的に発揮することで改善が可能ではないでしょうか。しかし、本市の中学校図書館は3中学校では放課後利用ができず、2中学校は15分のみの放課後開館です。生徒が学校図書館運営を担うため、部活動により放課後に対応できない、だから学校図書館は放課後閉館しているというのは機能不全であり、学校司書を配置すれば解決できる問題であると考えます。

 そこで、再質問の8件目、学校司書を配置して、学校図書館の利用時間拡充を検討する考えについて伺います。

 

◎教育部長(加藤由裕) 

 御質問の件につきましては、学校施設の管理面や指導計画などについて学校等の意見を聞きつつ、意向調査の結果や県内自治体の導入状況なども参考に、課題の整理と併せて検討したいと考えていますので、よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆要望

 

◆9番(川脇裕之) 

 それぞれの答弁ありがとうございました。

 それでは、答弁頂いた内容を踏まえ、要望を申し上げます。

 第1に、学校図書館の利用人数の記録を検討いただきたく存じます。貸出人数の集計になるかと存じますが、利用人数は一次データ、基礎データとして重要な情報であると考えます。同じ貸出冊数でも特定の生徒が多く本を借りているのか、多数の生徒が低頻度で本を借りているのかで利用実態は異なります。施策の検証のためにも、学校図書館の貸出冊数と併せて利用人数を記録して残していただくようお願い申し上げます。

 第2に、学校司書を配置して、学校図書館の利用時間拡充を検討する考えについて、検討したいと前向きな答弁を頂き、ありがとうございます。先進事例、成功事例を学び、迅速かつ有意義な検討を頂くことが有益であると考え、効果についてのほかの自治体の調査報告を紹介します。

 北海道旭川市立永山中学校、昼休みのみだった開館を放課後にも拡大、放課後にも開館できることから、図書館が学習場所としても機能するようになりました。

 次に、京都市立桂中学校、昼休みだけでなく放課後も開館している、夏休み以降は部活動を引退した3年生の利用率が上がり、下校まで自習に取組、分からないことを教え合ったりする姿をよく見かけるようになる。また、生徒会活動、家庭科部や美術部の活動のヒントや資料になるものはないか、探しに来る生徒もこの数年で随分増加した。うれしいことに図書館利用者と貸出冊数は年々増加している。

 次に、神戸市立大原中学校、昼休みに加えて業間の休憩時間、放課後も開館を始める。当初は混乱が予想され、試行的に行ってみて、問題が生じたら中止するという条件付きで始めたが、全く支障なく続いている。

 次に神戸市立星陵台中学校、昼休みだけの開館だったのが、3時間目の後の休み時間から放課後まで毎日開館されるようになった。以前は個別保護者会などで、教師がつけないときには閉館していたが、開館できるようになった。開館時間が増えたことで来館者数、貸出冊数が大幅に増えた。学校司書が常駐しているので、本を探すとき相談ができると好評である。

 次に、北九州市立千代中学校、放課後開館では常時10人から20人が宿題や自学自習に取り組んだり、友達を待つ目的で読書をしたりしている。高校紹介のリーフレットや中高生新聞を読んでいる生徒もいる。

 以上は一例ですが、私の調べた限り学校司書配置及び学校図書館の放課後開館はおおむね高く評価されている実態が確認できました。

 文部科学省の平成28年度学校図書館の現状に関する調査によると、全国の57パーセントを超える公立中学校で学校司書が配置されており、学校司書の配置事例は数千校ございます。

 また、学校司書配置に必要となる費用に関しては、学校図書館図書整備等5か年計画にて、地方財政措置が講じられており、2校に1名程度配置することが可能な規模です。学校司書を配置している県内自治体のほとんどでは、その職務を臨時職員、今後は、会計年度任用職員が担っており、みよし市は時給1,046円以内、西尾市は時給1,017円です。勤務が週30時間、年1,000時間程度ですので、国の地方財政措置で不足する分を自主財源に充てても、一般会計に大きな影響を与えることなく、本市5中学校に学校司書を配置可能であると考えます。指定管理者制度を活用して、民間の図書館司書を学校図書館に派遣する運用をしている東京都新宿区や文京区等の自治体もあります。生徒の満足度や利用率の高い学校図書館の運用事例を積極的に学んでいただき、参考にしていただきたく存じます。

 以上、確かな学力等を育む施設として、学校図書館機能を充実させて活用するために、学校司書配置による学校図書館の放課後利用可能時間拡大を要望申し上げ、一般質問を終わります。

 ありがとうございました。

 

◆参考文献

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/17/1360321_1.pdf

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/__icsFiles/afieldfile/2016/10/13/1378073_01.pdf

https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/22/1399308_3.pdf

http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/sgg/dokusyo/H27shisyojirei.pdf

https://www.kyobun.co.jp/feature1/pf20170424_14/

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/12728/27jissenhoukoku_7.pdf

https://www.kyobun.co.jp/feature1/pf20190422_11/

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/__icsFiles/afieldfile/2016/10/13/1378073_01.pdf