★東京医科大学が女子受験者を一律減点 不正入試は日本の大学入試の公正性を破壊する最悪の犯罪★

 

“東京医科大学の入試(筆記試験)において,女子受験生を一律減点して女子合格者を抑制したとする不正採点事件についての考察”

 

 

①はじめに:東京医科大学の入試不正(女子減点)問題についての考え方

 

 

これから東京医科大学の不正入試に関しての批判を述べる.その前に,自身の立場というか姿勢をハッキリとさせておきたい.私は人間は生まれつき不公平につくられていると思っているし,MTキケロの「人間の一生を支配するのは運であって知恵ではない」という言葉はその通りだと思っている.社会には残念ながら平等なことなんてほとんどなく,既得権益や癒着,不正,理不尽なことで溢れている.許しがたい程に世界は薄汚い.

 

 

それでも,不平不満や理不尽は愚痴を零したところで,気持ちはすっきりするかもしれないが,事態は好転しない.であるならば,不正や理不尽を仕方がないものとして諦めてしまうのではなく,少しでも改善できるように,主体性を持ち,自ら考え行動する姿勢で臨みたいと考えている.

 

 

同時に私は合理主義者である.感覚や経験ではなく,論理と数字で説明できることを優先する.情緒的なことは文学の中だけで十分であるし,経済合理性が一番大切であると考えている.だからこれから語る東京医科大学の不正事件について,女性差別だとか男女平等など,ポリコレ棒を振りかざすつもりは欠片もない.日本では男女雇用機会均等などと謳いながら,雇用の現場には明確な差別があるし,それは社会のダブルスタンダードな一面であり,経済合理性に基づく判断であることが少なくないからだ.

 

 

しかし,世の中には決して許してはならないことというのがいくつかあって,その最も大きなものの一つがシステムに対しての不正であると考えている.例えば,強盗や窃盗は個別に対処すれば良いけれども,貨幣の偽造は絶対に防がねばならないし徹底的に取り締まって罰しなければならない.もっと卑近な例えで言えば,もし国なり警察が,女性は運転に向かないから女性の運転免許学科試験の得点を減点するとしたらどうだろう? 決して許されずクーデターが起きてもおかしくない.今回,東京医大がしでかしたのはこういうことだ.

 

 

そして,日本の数少ない世界に誇れる素晴らしいシステムが受験であると考えていて,試験の点数が絶対的な評価基準であるシンプルで疑いようのないわかりやすいシステムである.みんなが同じ試験を受けて同じ問題を解き,得点の高い順番から合格する.実にフェアなシステムで素晴らしい.勉強は嘘をつかないとか努力すれば報われるとかそんなことを言うつもりはなくて,センター試験で9割得点できれば,その点数で〇〇大学は合格できるという明確な基準を支持している.

 

 

だから,東京医科大学の入試の得点操作は許しがたく全力で糾弾する.私には子どもはいないけれども(そもそも未婚だそろそろヤバいw),もし自分の娘が医者になりたいと一生懸命に勉強してきて,試験で得た得点を大学の判断で勝手に減点されたら絶望的な気持ちになり,絶対に許せない,入試不正は頑張って勉強している女子児童&生徒,勉強を頑張る子女を持つすべての親への冒涜であり犯罪であると思う.絶対に許せないし,最悪の犯行であると考えるので,徹底的に調査し,不正を犯した者に厳罰を与えて欲しいと願っている.

 

 

というわけで,ねちっこくわかり難い文章で恐縮であるが,最後までご覧になっていただければ幸いである.

 

  

②東京医科大学の女子受験生への一律減点事件の報道について

 

 

東京医科大学で女子受験者を一律減点する不正入試を行なっていたという吐き気のするような報道が流れた.

 




 

大学入学試験の公正性が担保されないのは,日本の大学受験制度のみならず,医師免許をはじめとする各種資格への信頼など,日本社会のシステム・価値基準への重大な冒涜である.

 

 

そして,受験で「カネを積んだ者を優遇したこと」と「特定カテゴリの集団を不正に陥れたこと」では,問題のレベルも規模も悪質さも天と地ほど違う.

 

 

これから各メディアによる総叩き合戦が始まるだろうが,問題の本質と糾弾すべき対象を間違えずにいたい.というのも,大して関係がない者を悪者として祭り上げたり,論点をすり替える報道が間違いなく続出するからだ.「罪と罰」罪を犯した者は誰か? 罰を受けるべきは罪をおかした者でなければならない.

 

 

東京医科大学の不正入試を指示した者 及び 利益を享受した者.おそらくは東京医科大学の経営陣(理事・監事・学長等)が該当するだろうが,現職に限らず前職でも関わった人間を徹底的に調査すべきであり,大学関係者だけでなく不正に関わった者のすべてを正確に洗い出していただきたいと思う.

 

 

どこにも正義も救いもなく,日本の既得権益の悪しき価値観と慣習を凝縮したかのような東京医科大学の女子受験者一律減点問題について考察することとしたい.

 

 

③東京医科大学の「女子受験生減点&女子合格者数抑制」は「金とコネの裏口入学」より遥かに悪質

 

 

東京医科大学が入試で女子受験生の得点を一律に減点し女子の合格者数を抑えていたという本事件.事実関係が明らかでない状態で,新聞報道を信じて良いものか懸念はあるものの,流石にこれだけの事件をファクトチェックなしにリリースしないだろうという希望的観測と,読売新聞は比較的信頼に値するメディアであると判断して綴る.(東京医大「女子受験者を一律減点」報道 まだ鵜呑みにできない理由)※この御指摘は本当に素晴らしいと思う.

 

 

私はこれまでの文部科学省の前局長が,東京医科大学を受験した息子を合格させてもらった見返りに便宜を図ったとして逮捕された報道については非常に冷めた目で見ていた.というのも驚きがなかったからである.

 

 

裏口入学という言葉がバブルの時代に流行ったけれども,カネを積んで合格を得るという取引が過去に行われていて,それがなくなるはずもないし,陰に隠れてこっそりと実施されることもあるだろうと考えていた.

 

 

だから,文科省の前局長の東京医科大学との不正合格事件についても,不思議なのはどこから情報が漏れたのだろう? という点であり(漏らした者に何の利益がある?)音声データまでがリークされているところを見ると,誰かがトラップを仕掛けてそれに嵌ったのだなと眺めていた.

 

 

いずれにしても,文科省前局長の収賄疑惑は,図った便宜が文科省の権益の一つであるという点で性質が悪く,キャリア官僚による行政利権の私物化であり,本来であれば監督官庁で不正入試を取り締まる立場の人間が収賄事件を起こしたという日本の官僚への信頼を失墜させた由々しき行為ではあるものの,息子を思う親心が背景にあり,当事者である前局長が逮捕されたことにより,おそらく本人は懲戒免職となり退職金もすべて没収される.カネを積んだ受験者を大学が優遇したという利害関係が明確でシンプルな事件ではあった.

 

 

文科省前局長は天下りの機会を失い,息子は大学を追われ,取り返しのつかない損失と罰を受けたのである.因果応報や罪と罰はハッキリとしており,天下りや文科省と大学の関係と体制を改善する良い機会になれば良いと考えている.

 

 

④「東京医科大学の入試不正の問題点」→入試の公正性の担保をぶち壊しにした点が究極に悪質

 

 

今回の「東京医科大学の入試点数の不正操作による女子受験生減点&合格者数抑制」は東京医科大学が女子受験生を一律に減点するという最悪の不正である.事件の規模や悪質性,影響度などが文科省の前局長の件とは比べものにならないくらいに大きい.

 

 

同情の余地もなく欠片の正義もない.大学入試で女子受験生という特定カテゴリの集団を不正に陥れたという前代未聞かつ許しがたい犯罪である.そして,日本の大学入試の公正性を完膚なきまでに壊すものであり,どこにも救いがない.出来事は事実と解釈を分けて正確に情報を認識することが必要であり,まず事実関係を確認しよう.

 

 

東京医科大学は遅くとも2010年頃からマークシート方式の一次試験で、女子受験生の点数を減点し、女子の合格者の割合を3割前後になるように調整していた。

 

 

東京医科大学医学部医学科の一般入試は

・1次試験:マークシート方式の筆記試験

・2次試験:面接と小論文

→この1次試験の結果に対して,女子の点数に一定の係数をかけて一律に減点したという.

※出典:東京医大、女子受験者を一律減点 受験者側に説明なし(朝日新聞)

 

 

おそらく大学入試に限らず,すべての入試に関わる者が驚いたと思う.恣意的な採点が可能である面接&小論文の2次試験で加点した(下駄を履かせた)のではなく,筆記試験の点数を採点した上で一律に減点したのだ.信じられないし度し難い. 個人的にはAO入試や推薦入試には否定的であるが,恣意的に合否を判定することが可能である面接で加点したのであればまだ理解できる.しかしそうではない.

 

 

東京医科大学はマークシート方式の筆記試験の点数を減点したのだ! それも女子受験生に対して一律に減点した.

 

 

どの学校でも,入試においては不正を指摘されないために,つまりは後ろ指を指されることのないように,絶対評価ではなく相対評価をする場合には、選抜方法を筆記試験とは別のものとしている.つまりは,選考を推薦入試やAO入試として面接や小論文を課すことで,志望動機や適性,入学後の意欲などで総合的な人物評価を行うなどと曖昧な基準にしているわけだ.

 

 

私は公正性が何よりも重要であるという価値観であるし,入試の公正性や公平性にはこれまで様々な議論がなされてきた(大学入学者選抜における公平性・公正性の再考).教育関係者が知恵を絞って(少なく見かけ上は)なるべく公正・公平になる入学試験が課されてきた中で,その努力も取り組みを嘲笑うかのような東京医科大学の筆記試験の点数操作という入試制度をぶち壊しにした不正は狂気の沙汰である.

 

 

例えば,以前に話題になった群馬大学医学部の「年齢理由合否」訴訟では,筆記試験(センター試験と個別試験、小論文)に面接と調査書を加えた総合的な判断によって合否判定が下される.との入試要項に記載があり,筆記試験で合格者平均を10点以上 上回っていたものの,面接の配点(点数)が示されていなかったため,高齢による不当な不合格判定であることを立証できなかった.

 

 

社会のシステムというのは,不正の指摘に対して防御できるように,裁判に負けないように基本的には設計して運用されている.適性は採用側で判断するべきで,試験結果は筆記試験の点数を基準とすべきだと思うが,群馬大の主張は理解はできる.しかし,東京医科大学の筆記試験の点数を弄るのは完全にアウトだ.

 

 


 

⑤「東京医科大学の不正入試・不当な女子差別に対する補償(案)」他大も医学部の入試結果を調査すべき

 

 

批判や批評するだけではなく,今後の対策について提案することとしたい.先ずは入試点数の再確認を実施して,当該年度の合格最低点以上の点数を得ていた女子生徒に合格通知を出す.補償内容については早急に検討するとして,不正評価により不合格になった女子生徒の救済を何よりも優先すべきである.医者になりたいと3年ないしは6年,12年と莫大な時間を勉強(努力)に費やしてきた結果が,入試結果の不正による不合格というモノであって良いはずがない.

 

 

そして,不正を犯した者への罪と罰と責任を明確にするべきではないだろうか? 大学だけが補填をするのではなく,不正に関わった者に対して損害賠償請求を実施して補填させるべきだと考える.不正を犯しても大した罰も損失も受けないというダブルスタンダードが日本の闇だと思う.

 

 

アメリカでは企業の不法行為や会計不正に対して,検察が起訴するだけではなく,企業が経営者を訴えることも珍しくない.また経営者に対する厳罰が下されるケースが多々ある.古くはエンロン事件やワールドコム事件,現在進行形ではフォルクスワーゲンの経営幹部が禁固刑と莫大な賠償金も命じられている.

 

 

東京医科大学では内部調査が行われており,その発表が待たれることろであるが,「東京医科大学の女子減点 元幹部の証言 どこの医大でもやっている.不正という認識はない」との新たな取材報道が流れた.

 

 

 

入試業務に携わっていた東京医大元幹部が取材に応じ、「どこの医大でもやっている。不正という認識はなかった」と話しました。 その上で、「体力的にきつく、女性は外科医にならないし、へき地医療に行きたがらない。入試を普通にやると女性が多くなってしまう。 単なる性差別の問題ではなく、日本の医学の将来に関わる問題だ」と述べました。

 

 

この東京医科大学元幹部が証言することの意図が全く理解できないため(企業であれば退職時に秘密保持に関する誓約書を提出するので,在職時の情報を漏らすことはタブー.賠償責任を負う),TBSはソースとエビデンスの確認が出来ているのか?と疑問に思うが,本報道によると,入学試験で女子を一律に減点することは,日本の性差別の問題ではなく,日本の医学の将来に関わる問題であると,自分たちが正しいと考えているようだ.議論というのは問題意識の共有がなければ成り立たない.入試で点数操作することに罪悪感を感じていないどころか,何が悪いのか?と開き直られている状態である.

 

 

例えば虐待が悪いと思っていない人間に,その罪を糾弾したところで聞く耳を持たないし,罪の認識がないので理解もできない.もう,何が問題なのかを彼らにわからせる必要はないだろう.禅問答になってしまう.だから,徹底的に調査して,不正に関連した人々に,補償の責任を取らせるべきだろう.責任とは最終的には金と権利だ.

 

 

東京医科大学は,一律減点されてた女子受験生の入試の採点を元に戻し,合格点を超えていた受験生には追加合格を出す.そして,受験から追加合格までの間の学費その他を全て補償する.これが最低限に必要な補償となるだろう.加えて慰謝料も支払うべきだ.

 

 

大阪大学が一般入試での出題・採点ミスで追加合格とした受験生に対する補償の考え方を示したが,それが一つのモデルにはなる.大阪大学では,他の大学に払った入学金や授業料など「本来負担する必要がなかった経費」を補償するほか,慰謝料も支払うとした.

 

 

大阪大学の追加合格の件は,試験問題と採点のミスであり,悪意があったわけでもない.それでもこれだけの補償をした.東京医科大学は過失(不注意でしでかす思わぬ過ち)ではなく,完全に故意(受験者の権利や法益を侵害する結果を発生させることを認識しながらそれを容認して行為)で実施しており,税金や大学が負担するのではなく,不正行為者に賠償請求すべきであると考える.

 

 

そして,東京医科大学が投じた爆弾は,女子受験生一律減点を他の大学でもやっていると指摘したことである.大学入試の公正性に疑問を投げかけたわけだ.すべての大学の入試点数のチェックを実施するしかないだろう.証拠を残すような稚拙な運用を実施している大学はないかもしれないが,点数が明らかになれば不正のチェックが可能となる.

 

 

大学入試点数操作などという絶対にあってはならないのに,そのあるはずがないと考えられていたことが実際に起きてしまった.日本の大学入試の公正性と結果の担保を証明するために,文科省はすべての大学に報告を義務付けるべきであると考える.

 


 

⑥東京医科大学 不正入試のマスコミの報道が酷い.ヤフコメとハフポスト(朝日新聞)から考える日本のメディアの報道品質

 

 

低品質で下劣な記事をハフポストが掲載していた(https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/01/toukyouika-joseisabetu_a_23494326/).※リンクを貼るのも嫌なくらいに酷い記事なので見たい方はコピペしていただければと思う.入試での男女差別が医大全体にあると噂されていたという記事だ.文末に「だと聞きました」「という話です」「と言われています」という言葉が続く.新聞が事実報道ではなく感想文であることが問題になっているが,酷い記事だ.

 

 

「ハフポスト日本版」はアメリカのメディアと朝日新聞社との合弁事業で行われており,執筆は朝日新聞が担当しているという.これが新聞社が発信するだろうか? 朝日新聞はまともな報道も少なくないのに,信頼性を自ら地に落とす情報を発信するのは本当に理解に苦しむ.すべての記事の冒頭に「弊社の報道は事実報道ではなく,うわさに基づいた憶測記事です!」と入れるべきだと思う.それぐらい最悪な記事だと思う.

 

 

フジテレビを肯定するつもりは欠片もないけれども(低品質&下衆報道の実績では朝日もフジテレビもどんぐりの背比べ)「全国39の医科大学にアンケートを実施した調査」はまだ評価できる.女子受験者の得点を操作したことがあるか?との質問にすべての大学は「ない」と回答したそうだ.入試の女性差別が医大全体にあるなどと報道した朝日新聞はどう矛先を収めるつもりだろう?

 

 

そして,ヤフコメを見て絶望的な気持ちになった.ヤフコメといえば,ウヨクとパヨクの見るに堪えない誹謗中傷の最前線であるのだけれども,大学受験不正という社会的事件においても,そのコメントの酷さは際立っており,一部なのか多数なのかはわからないけれども,少なくない数の人々は,何が問題であるのか?という自己判断基準を持たず,怒りと憎しみと不寛容というぶれない軸を元に,行き場のない社会への不満を掲示板にぶつけている.

 

 

以下YAHOOニュースの当該記事へのコメント共感順に並べたものである.※出典は各PDFフッターに掲載.

 


 

以下一部引用する.

 

 

  • 女性が家事育児という意識を変えないとダメなんだと思う。
  • 募集要項に女子の定員を明記しておくべき。入試制度的にそれが不可能なのかどうか知らないが。
  • 本人の責任感と御主人になる方の子育て参加、病院の女医に対する子育て支援が必要なんじゃないでしょうか。
  • 女子医大のように男子医大を作ったらどうでしょうか。
  • 本気で必要悪と思うなら、定員のところでやるべきでしたね。
  • 男手が必要という理由もわかるけどそれなら定員で枠とか決められないの?

 

 

 

女性受験者が不利になるような入試を実施したことで,懸念した通り,男女平等や女性の働き方など,ジェンダーに関する指摘で溢れている.私は今回の東京医科大学の女子受験生点数の不正操作は,橘玲氏が指摘するような「日本は先進国の皮をかぶった前近代的身分制社会」が問題であると思っている.

 

 

一部権力者が入試結果を不正操作できるという構造的欠陥であり,不正を防止&チェックする仕組みが働かず,その権力者がフェアネスの価値観も男女平等の価値観もないような連中であることが問題であり,男女格差やジェンダーの問題と絡めて議論するのは妥当ではないと思う.

 

 

そしてオーサーコメントも酷い.生活保護関係の連載で有名なみわよしこ氏が,ジェンダーバイアスの話を取り上げている.本件は東京医科大学が女子受験生を不正に取り扱ったけれども,男女性差の話は受験結果の公正性が侵害されたことの本質とはズレており,論点をすり替えて問題の本質をぼかしてしまう.

 

 

男女差別の問題は非正規雇用やシングルマザーなど問題と原因が明確である社会問題で議論するのが妥当ではないだろうか.そもそも「女子避け」は簡単です.などと無責任なことを語ってジェンダー問題に誘導するのは酷い手法だと思う.

 

 

2ちゃんねる創始者のひろゆき氏がその支離滅裂な言動に「この人微妙だな」と評されたことで有名な石渡嶺司氏も以下のようなコメントをしている.以下一部引用する.

 

 

  • 医学部受験の場合、私立大では2次試験の小論文・面接で男子受験生を加点。男女比を変えようとする動きは東京医科大学以外でも水面下ではささやかれていました。
  • 一般入試のそれも1次試験で一律減点というのはあまりにも不公平です。

 

 

どうして医学部受験の男女比を変えようとする動きがささやかれていたなどと憶測で話をするのだろう? 公平or不公平の問題ではなく,日本の大学受験システムの公正性を揺るがす大問題であるのに,論点齟齬も甚だしい.

 

 

二人のオーサーを事例として挙げたけれども,日本最大のPVを誇るニュースメディアであるYahoo!ニュースがこんな状態であり,テレビ放送のワイドショーも酷いけれども,日本の報道はピンからキリまで低品質で,貴重な情報や価値ある情報はほんの一握りであり,文字は分かるが文は読めないという人が少なくなく,何が問題なのかを整理して議論できる人というのは多くない.結構に酷い現実であると思う.

 

 

⑦日本版「レガシーアドミッション」を検討しても良いのではないか? 寄付を前提とした裏口入学の正当化の提案

 

 

アメリカの大学入試ではアファーマティブ・アクション(特定の少数派を優遇する)が実施されている.また,レガシーアドミッション(卒業生の子弟の入学審査基準が緩くなる)仕組みもあって,公正性とは対極の複雑な選考が行われている.社会的問題にもなっているのだけれども,私は合理主義者で現実的な政策を好むので,この政策を上手く導入したら良いのではないか? と考える.

 

 

アファーマティブ・アクションのような特定の人種を優遇する配点というのはありえないと思うが,富裕層に寄付を前提とした加点は検討に値する.どういうことか? 合格基準点に足りない者に対して,点をカネで買えるようにすれば良いのである.こんなことをいうと金持ち贔屓だの平等の精神だのとの批判があるかもしれないが,私は今回の東京医科大学の不正採点よりはずっとマシであり,制度さえ適切に確立すれば,多分にワークする仕組みであると考える.

 

 

具体的には入学定員の5%を上限とする等の枠を設けて寄付金によるレガシーアドミッションを実施する.併せて点数のボーダーを設定する.最低合格点の5%不足までを対象とするといった形だ.100人に合格を出す入試で最大5人は,合格最低点の500点に届かない475点でも,お金で点を買えて合格できる仕組みにしたら良い.点数をオークションにかけたら最大収益を図れるだろう.

 

 

そして,その収益は良い成績を取った苦学生への原資とする.つまり,例えば試験上位の10%の成績をおさめた,家計収入(親の所得)が低く,大学の学費が払えない学生へ奨学金として支給するのだ.人数の割合や点数の配分,金額などは議論の余地があるし,特に人数の割合は厳しく設定する必要はあろうが,これにより貧しい学生にも学びの機会が与えられる.現在政府が検討している不平等で酷い条件の大学無償化施策よりはずっと納得感があると思うのだけれども,即物的過ぎる考えだろうか?

 

 

⑧東京医科大学の不正入試の調査と真相究明から今後期待されることと起こりえる懸念点.不正は正されるか?

 

 

東京医科大学の女子受験生の一律減点という入試不正が調査&追求されることにより,大きな期待と拭えない懸念があるのでここで指摘しておきたい.一つは希望的観測である.今回の不正が徹底的に調査されて,どの大学でもフェアな採点が実施されるようになれば良いと思う.

 

 

文科省が本件の調査を指示して,入試で不正を犯した者には厳罰に処す.今後はチェック体制を確立して不正が起こせない仕組みを示し,入試の不正が行われないような対策をとる.これが望ましい未来であるし,こうなって欲しいと思う.次年度以降,女子受験生の合格が増えたとしたら,本件が契機となって社会が少しだけ公正になるという読売新聞と未来の女子受験生の勝利だろう.

 

 

だがしかし(経験則で語るのはあまり好まないけれども)私は社会と既得権益の腐った実態の最前線を見てきたので,入試がフェアで誠実な方向に変わるとはあまり思っていない.今回不正を犯したような連中は,公正性なんて必要ない,自らの価値観こそが正しいと考えている既得権益者である.不正がわからないようにすれば良いと考え,その方向に舵を切るのではないか?という懸念だ.

 

 

具体的にはAO入試のような制度を拡大させる改悪が懸念される.東京医科大学の不正が問題なのは,筆記試験の点数を操作したからであって,これが面接や小論文などの適性試験という名の恣意的な評価基準で選考するという形になってしまえば,不正のチェックは出来なくなる.筆記試験以外をブラックボックス化して,大学にとって都合の良い人間を合格させられるよう裁量を拡大させる.こんな悲劇的な未来になってしまうのではないかと恐れている.

 

 

まさか?と思うだろうか.女子受験生の点数を一律減点するという,まさかそんなことが起きるはずがない,ありえない事件が起きた.この懸念も妄想が過ぎるということもないだろう.だからメディアにはまともな報道を期待したいし,事実確認&慎重な取材を期待したい.そして,我々に必要なのは,不正を犯せる制度が導入されないように注意深くウォッチしていくことであり,不正はNO!と声を上げることであると考える.

 

 

⑨東京医科大学の入学試験に関する不正問題の報告書が今後活かされることを願う

 

 

東京医科大学が入学試験に関する不正問題の報告書を取りまとめて公表した.

 

 

→東京医科大学 入学試験における不正問題に関する内部調査報告書

 

 

当初,読売新聞が報じたような女子受験生の一次試験得点を一律減点したというのは誤報(間違い)であり,2018年度入試では以下の操作が実施されていたとのことである.

 

  • 6名の学生への加点(特定の対象者の優遇)
  • 二次試験小論文において,属性による得点調整(浪人よりも現役を優先かつ女子よりも男子を優先)

 

前者はいわゆる裏口入学の一環なので,カネで得点を買ったと考えれば良いだろう.問題は後者であるが,現時点における事実関係を確認して,今後の徹底的な調査の必要性と重大な女性差別的な思考が間違いを指摘し,再発防止策にも言及している.「重大な女性差別的な思考に基づくものといわざるを得ず強く非難されるべき」との指摘もあり,わかりやすく誠実な報告書であると思う.

 

 

とはいえ,東京医科大学の件は,文部科学省元局長が受託収賄の被疑事実で逮捕されたことが不正入試問題発覚に繋がっただけであり,通常の小論文や面接の評価基準はブラックボックスであること,他大で実施されていたとしても内部告発がない限りは露呈することはないだろうことはモヤモヤする.東京医科大学の不正な得点操作の問題が,他医学部入試の担当者にプレッシャーを与え(見せしめとなり),不正が一掃されれば良いと願っている.

 

 

ところで,山本一郎氏が指摘していたけれども(→医学部の男女差を「合格者数」「合格率」で比べる馬鹿が多い件について),入試制度の透明化を指摘するために,パラメーターにならないデータを利用するというのはいかがなものだろうか? メディアの報道の馬鹿さと適当さというのは絶望的な水準にあり,広告を出稿している企業は出稿を見直さなければブランド価値が傷つきなねないし,読者が三行半を突き付けた方が良いのではないかとさえ思う.

 

 

入試制度の透明化を指摘するために調査が必要なのは,合格最低点と受験者の一次試験の素点の関係であり,試験点数が合格最低点を大幅に上回っているのに不合格になったという理不尽で不透明な事象が起きていないか? ということだろう.マスコミのリテラシーとアビリティには期待できず,文科省の徹底的な調査にかすかに期待するしかない.自浄が働かないからチェック体制があるはずであるのに,機能不全に危機感を覚える.