★「大学定員厳格化」と「東京23区私大定員抑制」は最悪の政策 文科省の大学への規制と補助金大学行政の問題点★

大学補助金の問題点

 

「大学定員厳格化により早稲田、慶應、GMARCHを筆頭に、多くの人気私立大学の合格者数が減」

 

「合格者数減により人気大学への入学可能性が減り、誰が得をするのか? → みんな不幸になる酷い事態」

 

「Fランク大学など定員割れの大学を放置したままで、人気大学の定員を抑制する文科省の歪んだ規制への異議」

 

「東京23区私立大学の定員規制をしても地方は救えない。地方創生に向けては地方国公立大学に資金を投じるべき」

 

「All-or-Nothing方式の私立大学等経常費補助金の問題点」

 

毎日悪いニュースと愚策ばかり目にしていると感覚が麻痺してしまいそうになるが、朝から酷いニュースが飛び込んできた。

 

 

「入学定員超過 日大商学部の補助金没収」

 

 

年度末の3月30日、日本大学の臨時理事会が開催された。緊急議題は入学定員超過率について。配布された学部別の「入学定員超過率」一覧表に理事たちの目は釘付けになった。
問題は入学定員が1266人に対して入学者数1515人の商学部。249人の定員オーバーで入学定員超過率が19%になっていた。文部科学省は、入学者数を定員に近づけるため、18年度から私学助成金の交付基準を厳しくし、入学者数が定員の10%を超えた場合、補助金を全額カットすることにした。定員19%超過の商学部は約6億円の補助金を失うことになる。

 

 

大学入学定員超過により補助金がもらえないという事態に、日本大学が先頭を切って直面する可能性が出てきたわけだ。

 

 

日本大学商学部が合格者数における進学者数の見込みを見誤ったことの失態(日東駒専あたりが計算が一番難しいので気の毒ではある。ただし、あまりにも稚拙)や、6億円の補助金を失うという確定的な報道には疑問であるが(日大としては商学部新入生に他学部への転学部を促すだろう。学費免除等のインセンティブを示してもだ)、日大が文科省の「大学定員厳格化」の政策により大変な事態になっていることは確かだ。

 

 

私は「大学定員厳格化」と「東京23区私大定員抑制」は、問題だらけの酷い政策であり、こんな非合理的な規制は撤回すべきであると考えているので、その問題点について言及したい。

 

 

そもそも論として、ほとんどの親が教育熱心で、少しでも良い教育を子どもに受けさせたいと考えるのは、良い大学に行かせたいからであろう。過酷で熾烈な中学受験競争も、その目的は希望する大学に合格するためであり、その最短ルートであり、最も可能性が高い選択だからである。もちろん、学校設備や教師の質、育ちの良い仲間に恵まれるなど、少しでも良い環境で子どもに教育を受けさせたいという理由もあろうが、ゴールは良い大学に進学させるためであることは間違いない。

 

 

つまり「良い大学に行くために多額の金と時間を教育と受験に費やす」これが現実としてある。良い大学に進学したからといって幸せになれるとは限らないし、良い会社への就職が約束されているわけではない。しかしそれは、哲学的であったり、感覚的な指摘である。

 

 

医学部に進学しなければ医者にはなれないし、総合商社を筆頭に時価総額上位の人気企業は、旧帝大や早稲田・慶應出身者が大半を占める。GMARCHや関関同立、国公立大学出身でなければ、希望する優良企業への就職の可能性も限定されてしまう。そう、これは確率の話である。より可能性の大きい選択として皆が良い大学を目指す。とてもシンプルでわかりやすい構図であると思う。

 

 

親も子も多大な金と時間を良い大学に進学するために使っている。私が「大学定員厳格化」が許しがたい愚策だと考えるのは、この優良大学を目指してきた多くの方の努力と投資の費用対効果である「人気大学合格の可能性(合格者数)」を国が実質的に制限したことにある(補助金という財布を握られて大学が従わない選択肢はありえない。カネで大学運営の自由を奪う卑劣な策だ)。

 

 

わかりやすく具体例をイメージしてみよう。高校生の我が子が、早稲田大学を目指して勉強を頑張ってきた。現状は当落線上の学力にある。国が突然、私立大学の入学定員規制(厳格化)を求め、結果、早稲田大学も合格者数を2000人減らした。子どもには早稲田大学からの不合格通知が届いた。

 

 

悪いのは誰だろう? などと問うつもりはない。あなたは納得できるか? 保護者や受験生としてこんな理不尽な政策が許せるか?ということだ。

 

 

一生懸命に受験勉強を頑張ってきて、突然の国が入学定員厳格化を実施すると宣言し、希望大学への合格可能性が低くなってしまう。こんな理不尽でアンフェアなことは許しがたい。と私は激しい憤りを感じる。なお私は、子どもがいないどころか独身で、定員厳格化を求められる大学とも一切関係がないことを先にお断りしておく。一切利害関係のない地方住まいのロストジェネレーション世代のおっさんだ。

 

 

「大学定員厳格化」こんな非合理でふざけた規制が政策としてまかり通って現実に激しい嫌悪感を覚え、間違っていないか? と問題提起し、多くの方に知っていただきたく綴る次第である。問題点を順に記す。

 

 

①「大学定員厳格化の問題点」大都市圏に学生が集中している現状が問題である。という阿呆みたいな理由で人気私立大学の合格者数は厳格に管理されることになった。❝All or Nothing❞ 補助金の仕組みの愚」「保護者(受験生)の経済的負担は大きくなり、大学は入学者数の測定に忙殺されて失敗が許されない」

 

 

大学定員厳格化の具体的な内容は「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」に記載されている。

 

 

時間のある方は本資料をじっくり読んでいただくとして、要点は以下の別紙3に集約されているため、ピックアップして掲載する。

 

入学定員厳格化

 

2017年度から、定員が8000人以上の大都市部の大学の定員管理が厳しくなる。これまでは入学者が定員の1.2倍以上になると、補助金不交付の対象となっていたが、この超過率が段階的に引き下げられ、2018年に1.1倍になる。2019年以降は、1.0倍を超えると人数に応じて補助金が減額される。そのため、今春から合格者数を絞る動きが広がると見られている。

 

 

この定員厳格化による影響は以下の記事をご覧になっていただくのがわかりやすいだろう。

 

 

→入試の「定員厳格化」で大学側が悲鳴(AERA)

 

→定員管理厳格化・合格者絞り込みが浮き彫り(ベネッセ)

 

 

冒頭では受験生と保護者の立場からこの定員厳格化規制が愚策であると申し上げたが、そんな感情的な理由だけで政策を否定するつもりはない。本規制がやっかいなのは、私立大学等経常費補助金が「All-or-Nothing」方式であることが問題なのだ。本補助金に限った話ではないのだが、どうしてこんなに馬鹿な制度を規定するのか度し難い。

 

 

入学者数が定められた定員超過率を上回ると補助金は不交付となるのだ。わかるだろうか?「入学定員を一人でも上回ると補助金が全額カットされる」ポイントは減額ではなく不交付となる点だ。これがどれくらい深刻な事態であるから、先に示した日大商学部の定員超過の事例からも明らかであろう。指定の定員超過率を上回ったために、6億円が交付されない(不交付の)危機にある(日大商学部が無能と言われるのも致し方が無い。リスクリターン管理の計算があまりにもお粗末である)。

 

 

繰り返すがどうしてこういう極端な仕組みとするのか本当に理解に苦しむ。オール・オア・ナッシング、つまり、全か無かを大学補助金に導入するところが日本社会と行政の駄目なところであると声を大にしたい。どう考えても、定員超過率が増すごとに減額率を大きくすべきだろう。

 

 

代替案はいくつも考えられるが、シンプルな制度として、定員超過率の1.0倍を基準として、負のインセンティブを導入すれば良いだけなのだ。例えば1000人が定員なら、5%増まで(1001人目~1050人目は×0.5の補助金額支給)、10%増まで(1051人目~1100人目は×0.1の補助金額支給)、そしてそれ以上(1100人目以降)は補助金を減額する(×マイナス0.5)方式である。

 

 

1000人の入学定員までの補助金額は補助金支給するけれども、それ以上の学生を入学させた場合は、補助金取得額が減り、10%以上定員超過をさせた場合には10%以内入学定員よりも減額させるという措置である。インセンティブというのは賢くつかわなければならないし、日本社会はモチベーションとインセンティブの設計が往々にして狂っているので、補助金行政でもこんな博打のような酷い政策を推進してしまう。

 

 

誰かがおかしいことにはおかしいと正々堂々と主張すべきであるし、なにがおかしいのか、どのように修正したら良いのか?根拠と論旨を明確にして対案を示すべきであるのにも関わらず、こんな酷い規制を推進する与党の既得権益が問題なだけでなく、この国は野党も批判と批評と否定を声高に叫ぶだけの無能が牛耳っており、生産性のある議論は生まれない。そして真面目に受験勉強を頑張る受験生とそれを応援する保護者が割を食う。本当にうんざりする。

 

 

次に、大学定員厳格化により付随的に起きている事態を紹介しよう。日大商学部は入学予定者数の計算に失敗し、合格者数を多数出してしまったが、他の大学では絶対に定員超過率を超えることのないように、合格者数を絞っている。

 

 

常識的に考えれば(リスク&リターンの計算ができれば)、大学としては合格者数を少なめに調整する他ない。

新入生が一名でも規定の定員超過率を超えたら、補助金のすべてを失うのである、安全策に動くのが当たり前の対策である。

 

 

→もう3月末なのに「追加合格」って?(NHK)

 

→大学の「駆け込み合格」増える 受験者、喜びと困惑(日本経済新聞)

 

 

定員を超えないよう、まず少なめに合格者を発表して、様子を見ながら追加で合格者を出すという大学が増えてきている。
補助金が支給されないという事態は避けたい。でも定員をあまりに下回るのは経営として困る。

他大学で追加合格した人から辞退され、玉突きのようにうちも追加合格を出す。偏差値上位校より下位校が割を食う。

 

上智大は3月に600人以上の追加合格を出して学生数を確保した。入試担当者は「学生数の超過だけは避けたいので当初の入試の合格者は近年少なめにしている。辞退者数は他大学の動向も影響し、正確な予測は難しい」と首を振る。「学生に負担はかけたくないが、追加合格の時期が遅れている」と話す。

 

文部科学省は各大学に「入試の合格発表は4月20日まで」と通知しており、新年度が始まっても定員割れを避けるために追加合格を認めている。ただ「4月以降に合格を通知するのは好ましくない」としており、20年度からは「3月31日まで」に前倒しする方針だ。

 

 

「合格者数大幅減 → 補欠合格・追加合格で調整」という保護者と生徒にとって負担が増す事態があちこちで起きてしまっているのだ。大学としては定員超過率のギリギリの人数を入学させたい。ただし、一人でも数を超えたらゲームオーバーな運営である。追加合格で人数調整するのは致し方が無い選択であろう。

 

 

しかし、この追加合格というのは非常にやっかいな代物である。第一志望の大学に落ちて第二志望の大学に合格した者は、第二志望の大学への進学手続きを実施する。具体的には、入学金約30万円を支払い、実家を離れる場合は下宿の契約をする。諸々の支払い後に第一志望の大学から、あなたは追加合格ですと通知が届く。子どもは喜ぶかもしれないが、親としては頭も懐も痛い。やむなく諦めるケースもあるだろうし、その時の子どもの失望はいかほどのものであろうか。

 

 

そもそも親だけでなく、大学からも悲鳴が聞こえる。入学者数の正確な人数測定に苦慮しているからだ。受け入れ側の大学としては、「入学金が支払われた人数」を3月上旬に計測する。この入学金支払期限までに入学の申し出がなかった者は辞退としてカウントすることができる。ただし、これは概算にしかならない。早稲田大学のように前期学費の納入期限を3月末に仮設定している場合は、正確な人数を測定することが可能であるが、自校よりも上位の大学や、国公立大学の合格発表も待たなければならない。国公立大学2次試験の合格発表は3月20日以降だ。

 

 

大学としては、過去の実績や統計など、様々な変数でシミュレーションを繰り返すけれども、正確な人数を確認することは入学するまでわからない。早稲田や慶応は比較的計算が容易だが(辞退率の予測がしやすい)、GMARCHや日大や東洋大学といった中堅大学は、受験者の併願(ライバル校)が多すぎて、過去の実績を元にしても正確な入学者数を予測し辛い。

 

 

中堅大学以下の大学は地獄である。「偏差値上位の大学が追加合格を出す → 入学辞退が大量発生 → 追加合格を出しても入学者がいない(そもそも受験者数が少ない)」結果、入学定員の上限に苦慮する有名私立大学と、入学者すら集められない低偏差値大学との二極化が激しく進む。

 

 

結果、この保護者と受験者が多大な経済的負担を背負い、受入れ側の大学も入学者数の調整に稼働を強いられるという、馬鹿みたいな発生である。誰も得をせずに皆が不幸になる政策が日本にはあまりにも多い。少数か多数かのバランスはさておき、得をする人間がそれなりにいるのであれば政策は理解はできるが(許しがたい規制が多いが)、それがどうも見えないのが実に度し難く日本的と言えるだろう。